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風見梢太郎「黒い凍土壁」(「民主文学」17年1月号)

 二つのことを書いている。ひとつはこの作家がずっと書き続けている原発問題。汚染水と凍土壁の問題である。いつもある程度の専門知識を持つ高年の主人公が登場するが、人物の設定はそのつど少し変えているような気がする。作者自身は畑違いの人間で、独学で原発を勉強して書いている。(たぶんそうだったと思う)。
 かつてぼくのブログにコメントを寄せてくれる人が、科学的な問題を扱うのに、正誤を保証できないフィクションを使うことへの違和感を表明されていた。難しい問題で、ぼくもどうと断定できないが、軽はずみに書くならともかく、この人は相当専門的に勉強して書いている。もちろんフィクションを使うということは、絶対にこうだと断定しているわけじゃない。ひとつの可能性について彼は書いている。それを情報のひとつとして受け取ってもいいのではないか。鵜吞みにしなければいいのだ。ネットにあふれるようないい加減な情報ならともかく、ある程度の信憑性を持った情報を遮断せねばならない理由はないだろう。
 もうひとつは、70年前後の学生運動家たちの現在を書いている。実は以前にもそういうことを書いていた。それも彼には大変気になるテーマなのだ。
 ここで扱っているのは、たぶん京大と思われるところの土木工学系の同窓会である。表に出て活動していた<私>は大企業には行けず、中堅企業で研究業務に従事しながら、志を捨てずに組合活動をしてきた。御用組合ではないから、出世はしなかった。
 大企業を内部から変革するつもりで入社していった同志たちのかなりの部分がやがて志を捨ててしまった。
 そういうコースをたどったなかの一人が、前作でも登場したが、今作でも登場する。そういう人物の複雑な心の内を、あまり踏み込まずに外からそれとなく書いている。同情を込めて書いている。
 いい作品である。
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