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大丘 忍「老女の生き甲斐」(「樹宴」8号)

 これは随想だが、面白く読んだ。医者というのは人と接するのが職業だから、自然と人間観察に優れるのであろうか。細やかで、味わい深く、しかもユーモラスな人物描写をする作家が医者には多いような気がする。チエホフはその筆頭だろう。
 すでに70代後半に達した女性患者がいて、あそこが痛い、ここが痛いといって死ぬのではなかろうかと心配ばかりしている。「死にますよ」と医者は言う。「死なない人間はいない。豊臣秀吉も徳川家康も死んだ」そう言われても女性はなおもやってくる。
「死ぬのはあたりまえのことなのに、死ぬ心配ばかりしていてそれで人生楽しいだろうか」と医者は首をひねる。「死ぬ心配をすることがこの人の趣味なのだろうか」
 それで結局どうなったかというと、その人はある日ぽっかり死んでしまった。医者はびっくりする。「しまった。もっとちゃんと検査しておかねばならなかったのだろうか」と後悔する。ところが聞いてみるとその人は交通事故で死んだのである。「そうか、そういう危険もあったか。その注意もしてやらねばならなかったな」というのがオチである。
 読者の心からいっとき死ぬ心配を追い払ってくれるようなほのぼのした作品である。
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