プロフィール

まがねとおる

Author:まがねとおる
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

リンク

RSS

大丘 忍「茶飲み友達」(「樹宴」8号)

「樹宴」8号
 守屋氏の作品を除いて読み終わった。守屋氏の作品はたいへん長く読み応えがあって、時間がかかる。そこで、それは後回しにして、とりあえず、読み終わった作品の印象が薄れないうちに少しまとめてみる。

「茶飲み友達」大丘 忍
 この人の作品は6号7号と読んできて、つねに完璧で、長さもそこそこあり、それが矢継ぎ早なので驚かされる。(もっとも、手持ちの過去作品も出されているようではあるが)。
 文章に全く傷がない。すらすら読める文章である。話の構成と進め方も実に手際がよい。人物がよく書けている。存在感がある。内容に人情味があってユーモラスでもある。作者の生きてきた人生が滲み出てくるようだ。
 この小説の主人公は65才の勤務医。62才のとき60才の妻を病で失った。以来一人暮らしである。家事がまったくできない。二人の息子は北海道とアメリカである。息子たちは来いというが、行く気はない。いまの仕事に執着がある。
 そこに友人が再婚話を持ってくる。それは自分の死後の夫の日常を心配した妻自身の望んだことでもあった。息子たちの意向にも問題はない。
 ここに作者独特の視点が入って来る。セックスの問題である。いまの60代は若い。妻とも性関係はあった。妻を失った主人公は当分の間、妻の身体を恋しがる。60才で死別した夫婦の問題を精神面だけではなしに、こういう角度からも捉えたところに新鮮さを感じ、医者らしい見かただとも思った。
 ところが欲望というのは習慣的なもので、我慢しているうちに感じなくなってきた。いまではむしろ不能になったような恐れさえある。
 そのことが再婚話にかかわってくる。
 友人に紹介された女性は60才の未亡人、子供たちは独立してひとり暮らし。健康的で、感じのいい女性である。
 再婚は男にとっては都合のいい話だ。一人暮らしの寂しさもまぎれ、何よりも家事をこなしてもらえる。このへんの感覚はちょっと時代がずれている感じもするが、ともかく主人公にとってはそうなのである。
 しかし、女性にとってはどんなメリットがあるのだろう。もしかしたら、60才といっても健康的でまだ若々しいのだから、性的関係を期待しているのではなかろうか。しかし、自分はもしかしたら既に不能かもしれない。結婚したあとでがっかりされるのではないか。
 そこで主人公は思い悩み踏み切れない。
 といった心理模様を描いていくので、ユーモラスでもあれば、身につまされもする。
 その上にこの小説のよく出来ている点は、再婚相手を紹介する当の友人夫婦の描き方である。この夫婦がずっと上方漫才を演じ続ける。それが実に軽妙洒脱なのだ。ストーリーはこの漫才をはさみながら展開していく。おそらく大阪の夫婦には実際にこういう人が多いのではないかと想像させる。
 と、ここまではよいことずくめだが、一点だけ不満を。
 じつは最後まで読んでも、この女性が再婚を望む本音が分からなかった。ミステリーなら、女の目的は金である。実際、この主人公は医者で金は持っている。そこから連続殺人事件に発展するのは小説の常道でもあれば、現実社会でもたびたび起こった。
 作者は高齢者の孤独感は男も女も一緒だとしてすませているが、小説として読者を納得させるところまでは書けていない。なにかが不足している。そこが不満である。

 くたびれたので、ほかの作品はまた後日。
関連記事
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す