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植田文博「経眼窩式」(原書房2014年)

 福ミス第6回受賞作品。ハードカバー400ページ。長いが、読ませる作品。読みごたえもある。いままでの行き掛かり上、しっかり感想を書きたいのだが、なんだかミステリーの感想を書くことに多少飽きてきた感じで、興が乗らないので、簡単に済ませる。このことはこの作品がいままで扱った作品よりも劣っているということでは決してない。猛暑で頭も呆け、個人的にもいろいろあって、この一冊読むのに日にちもかかった。感想を書こうという勢いが出てこない。
 欠点から言うとタイトルだと思う。普通人にはなじみのない言葉で、関心が湧かない。「眼窩を経る式」と漢文読みしてほしい。頭蓋骨は頑丈にできているが、眼の部分だけは薄い。眼球と目蓋のあいだにドライバーを突っ込んで、ハンマーでこんこんとやれば破れる。そうやって行う脳内手術である。だが、作中では単なる手術ではない。その突っ込んだドライバーで前頭葉をかき混ぜてぶちこわし、人格を失わせてしまおうという残虐な話なのだ。この残虐な描写に読みたくない気持ちが起こる。だが、島田荘司も指摘しているが、全体として人物たちの描写が巧みで魅力的なので、読ませる。特に女性たちの書き方がうまい。恋愛小説のトーンをずっと維持しながら話を進めていく。
 最初単純な話にも見えるが、方々にかなりあからさまにヒントがばらまかれていて、きっとどんでん返しがあるぞという期待を抱かせる。案の定、終盤近くなってひっくり返る。それも一度で済まない。何度も何度もひっくり返る。あれよあれよという感じで、面白いといえば面白いのだが、ここまで全面的にひっくり返るのなら、もう少しちゃんとしたヒントが欲しかったという感じではある。
 ぼくが頭脳ゲームとしてのミステリーを望みすぎるからだろうか。読者の知らない事実が後から後から出てくると、首をひねってしまう。だが、たぶん、ミステリーにもいろいろあるのだ。十分読ませる作品だし、ラストのカタルシスで、読者は報われる。
 それにしてもカタカナが多い。男女の服装から、台所用品だとか、さまざまな日常品。この作家は今年でちょうど40才だから、彼らの世代には常識的なカタカナなのだろう。年寄りのぼくはイメージを結ぶことができない。できないのだが、そうやって具体的に書かれると存在感は出る。それはほかにもたとえば地理にしても、細かく描写する。ほとんど読み飛ばすのだが、書いてあることで場所のリアリティを出すことに成功している。ただ、経眼窩式術中の描写のリアリティは気味が悪すぎた。

「樹宴」8号をもらいながら読めていない。明日から読みはじめる。
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