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「玻璃の家」追加

「わからなかった」と昨日書いたが、犯人が分からなかったわけではない。犯人は比較的早い段階で見当がついた。というのは過去の時代には大勢の人物が出てくるが、2007年の舞台に出てくる人物は限られているので、最初から選択の余地は少ない。
 作者自身、登場人物に言わせている。
「これはひどく登場人物の限られた一幕芝居だ……あてずっぽうに言ってもきっと犯人はあたるだろう」
 そして事実上犯人を明かしてしまう。したがって解くべき謎は犯人にあるのではない。別のところにある。
 ひとつには顔を識別できない目撃者に、いかにして対象を特定させるかという問題である。物証がないので家宅捜索の必要がある。いまの科学捜査なら遺留品から物証は必ず見つかるという目論見がある。だが不確かな状況証拠だけでは家宅捜索の許可が得られない。強引に行えば証拠として採用されない。目撃者が役に立てるかどうかという問題に返ってくる。トーマ・セラの努力はずっとそこにあったわけだが、最後に画期的方法に到達する。そのヒントが17世紀の魔女狩りであり、またもっと直接的なヒントを目の前に見せている。でも、この問題では、読者が自分で解答に到達するのは無理だろう。解答を見せられて、なるほどと思うことになる。
 もうひとつは、動機を含む事件全体の構造が、2007年だけを見ていたのではつかめないということなのだ。1937年からの70年間、あるいは1968年からの40年間、その二つの時代に何があり、70年間、40年間がどのように推移したのか。この二つの事件の秘める謎が解明されていくにつれて、物語全体ががらっと様相を変えてしまう。そこで初めて2007年の事件が腑に落ちるという仕掛けになっている。これもヒントはちりばめられているのだが、作者の用意した解答に読者が自分でたどり着くのは難しそうである。というのは、かなり突飛な解答であるうえに、それが可能な唯一の解答であろうかという疑問もあるからだ。しかし解き明かされてみると、これもなるほどと納得させられてしまうのではなかろうか。
 推理小説としても、また、それ以外のいろいろな意味でも、一読の価値あり。
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