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荒木雅子「モクレン通り」(民主文学15年7月号)

 養護学校高等部の話。重くなりがちな題材だが、書き方がうまいので軽快に読ませる。勉強にもなった。特に圭介が教師に負けない走りを見せて人々を驚かせ感心させる場面。喜ぶ奈緒に当の教師が言う。
「あれでいいんですか。圭介はただ僕について走っただけですよ、泣きながら。いや、必死なのはいいです。速いのもいいですよ。だけど、彼にとっては僕についてくるのが義務だと思っていたんじゃないですか」「走るのを楽しいと思ったことがあるんだろうか。本来、体を動かすのは楽しいものじゃないですか」
 そう言われて奈緒は考える。「たしかに圭介は一番になっても少しも喜んでいなかった。圭介は言われたことを従順にこなす。自由にしてよいと言われたら何をしてよいかわからず、指を絡ませて足踏みを始めるだろう。できばえだけを求めても圭介の力にはならないのだ」
 意外だがもっともな指摘であり、しかもその当の教師坂本が、望んで障害児教育の場に来たわけではなく、中学校で英語とサッカーを教えるのが希望で、その試験に受かるまでの腰かけの気持ちをひきずっているのを奈緒が批判的に見ていた、という状況設定なので、坂本の言葉が余計に効果的になっている。うまい書き方と言える。
 ただひとつ疑問がある。圭介にはやりたいことが何もないような書き方になっているが、そこにいたるまでの叙述の中で、圭介は常にトランポリンをやっており、トランポリンをやっているときだけは活き活きとしているのだ。その事実がこの場面では無視されている感じがする。その事実の持つ意味をこの場面の中で考慮する必要があったのではないか。
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