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高原利生「不確定な矛盾の生成」

    不確定な矛盾の生成
  Generation of Indefinite Contradiction
                           高原利生

 粒度という概念がある。物事を扱う単位といっていい。正確には、粒度は、1.扱うものの空間的時間的範囲、2.扱うものの持っている無数の属性の中から選ぶ属性である。粒度の定まった粒も、慣例に従い単に粒度という。ある粒度の前提で、論理はその粒度間の関係である。粒度が先なので粒度を間違うと論理は必ず間違う。

 まず、事実がある。事実の歴史から価値が生まれ、価値を実現する方法,論理が生まれた。
 論理,方法である弁証法の単位は、事実の最小モデルである矛盾である。矛盾については、マルクス、エンゲルスの不十分な矛盾概念を変更したTRIZの創始者アルトシュラーに依拠し、事実の最小モデルであるように、矛盾の生成と運動を矛盾として再定義した。

 矛盾の型については分かってきている。残る大きな課題は、始めての矛盾の生成方法と、矛盾の解を求める方法の論理的網羅である。ここでは、前者、始めての矛盾の生成として、物々交換制度の開始を検討する。道具の歴史が、人類の歴史より古いのに対し、物々交換はわずか数千年の短い歴史しか持たない難しい行為だった。
 マルクスは資本論を商品がもう既にある前提で始めてしまう。これがマルクスの狭さを生んでしまった。マルクスは、書いた限り、殆ど間違っていない。ただ、今となっては、言わなかったことが余りに多いのである。問題は彼の言わなかったことにある。

 物々交換制度の開始は、「項-関係-項」が生成されることである。
 この制度開始の場合、項-関係-項のうち、項は、物々交換を行う二つの共同体のリーダーの観念である。
 この関係が面倒である。当時、所有という概念は、完全には成立していない。自分の前にあるものと相手の前にあるものがそれぞれの共同体の所有であるという認識が完全にはない条件で、自分の共同体の所有物と相手の所有物を同時に交換するという予定像の観念を作り、代表者二人がその観念をお互い事前に共有するという極めて困難な作業が終わると、最初の物々交換が成立する。

 1) この問題解決の謎の解決のための仮説は、次のようなものである。「女性の世界史的敗北」以前だったと推定される最初の物々交換でも、その物々交換を取り仕切る代表者は武力に優れた男であり得るので、二つの共同体の交換の代表者が男と女である可能性がある。たまたま、両共同体に生産物がやや余っている時期と、恋によって生じた、お互いが相手に何かを与えたい感情が重なるという極めてまれな条件が生じた。二人の恋がこの最初の物々交換の条件を作った。
 2) これに対し、石崎徹は、動物のオスのメスに対する、ものまたは行為のプレゼントとその返礼が発展し一方向プレゼントから双方向プレゼントに、さらに物々交換になったということも考えられるのではないかという。
 これらの1) 2) の問題解決は、いずれも、恋により、今の利己的行為から相手のことも考慮した行為への画期的改善が行われる。

 これらの仮説が正しい場合、技術の始まりである道具の使用に対し、物々交換の開始までに、二桁違いの長い時間が掛かった理由となる三つの困難さがあると推定できる。
 第一は、開始の判断の困難さである。はっきりしない共同観念を作りつつそれを共有するという困難さ、どのぐらいの量が相手の量に見合うかという判断の困難さ、二集団の保管場所は、当然、異なるので、いつ、どこで交換するか、そこにどちらが行くのか、或はそのどちらでもない場所にお互いが行くのか、の判断の困難さである。
 第二は、物々交換の前提となる、食料が余ることが少なかったという事情である。食料が余れば、余った食料は人口の増加に使われ、殆どいつも食料は不足していた。
 第三は、偶然の粒度が、長期の粒度の確実な成果を着実にもたらしたことである。半ば偶然に散発的に開始される物々交換が、必ず集団の発展、生の拡大という、長期間不変、普遍の価値に寄与した。これにより、道具の使用開始に比べて比較にならない長期間を要したにも拘らず、変化は確実に蓄積された。これは生物進化の弁証法と似ている。
 第一、第二は、開始の頻度が少なかった理由である。第二は、生産力が次第に大きくなり、食料が余る頻度は、歴史の進むにつれ増したであろう。第一の困難さを克服したのが、恋であるが、これには女系から男系への転換という仮説を必要とする。第三は、長期間を要したが、起こったことが確実に定着した理由である。
 今なら、TRIZ等、どの問題解決法にもある粒度拡大という解法の代わりに、当時は、恋が、粒度拡大により、はっきりしない共同観念を作り共有するという同じ課題解決をもたらした。
 3) 集団内で、一方向に無償で行われていたものの移動が、双方向他集団相手のために等価交換になることもあり得る。

 物々交換は、経済という制度をもたらした。物々交換が等価交換を目指すものであったことが重要である。仮に、食料の余っている集団が、食料のない集団に、一方向に無償で分け与える習慣が普及していたら、今日の技術、制度の発展は望めなかったろう。等価交換というシステムが、経済という制度だけでなく、技術、制度全体の量的発展を可能にした。

 以上が、発表の概要である。スライドは添付できないので、論文とスライドの内容の説明文になった。

 しゃべり終わってから、言わなかったことに気付いたことがある。「所有」は、他からの強奪からものを守るために、法以前にできた観念だったということである。その後、「所有」は紀元前2000年ごろの法によって固定化され、ヘーゲルは、所有は法的概念と思ってしまった。マルクスが、それを高い立場からとらえたことが彼の最大の貢献だと考えるが、彼は、経済学では、ヘーゲルにとらわれた面から抜け出せなかった。
 これがマルクスの狭さという問題の最大のものである。克服すべき最大のものでもある。
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540:「不確定な矛盾の生成」の正式版  高原利生 by 高原利生 on 2015/11/18 at 14:09:06 (コメント編集)

中川徹先生(大阪学院大学名誉教授)のホームページhttp://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/ に、高原利生論文集(第3集):『差異解消の理論 (3) 弁証法論理と生き方』を掲載していただいた。
和文:http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2015Papers/Takahara-Biblio3-2015/Takahara-Biblio3-151102.htm

三年間の高原利生の9編の発表を集め、各論文へのリンクが張ってある。

「不確定な矛盾の生成」は、この中の[32]CGK2014で、本文とスライドへのリンクがある。

411:高原利生「不確定な矛盾の生成」 (雑文 - 2014年12月11日) の位置 by 高原利生 on 2014/12/12 at 04:17:23 (コメント編集)

高原利生「不確定な矛盾の生成」雑文 - 2014年12月11日
http://maganetoru.blog.fc2.com/blog-entry-539.html の位置について

 まず、本コメントのもとの上記の文章の位置を述べておきたい。
 今回の文章は、福山大学で2014年10月25日に行われた、情報処理学会、電子情報通信学会、電気学会、照明学会、テレヴィジョン学会、電気設備学会の電気・情報関連学会の各中国支部が連合して開いた学会発表についてのものである。
 それぞれの学会は、個別に全国大会を毎年一回行っているが、地方のみの大会を個々に開く力はないので、それぞれの学会の地方支部が合同で毎年一回連合大会を開く。各地方ごとに開かれている。この主催学会は、どういうわけか、地方ごとに異なっている。「地方」の区分けの仕方が、学会ごとに異なるためかもしれない。例えば、情報処理学会、電子情報通信学会には、北陸支部がある。近畿支部はなく関西支部がある。
 この大会の「格式」は、正直余り高いとは言えない。論文の枚数も1,2枚である。それぞれの学会の全国大会の発表論文は、国会図書館に保存される。大学教授などの発表もある。連合大会の発表論文は、国会図書館には保存されない。ほとんど大学院学生の発表である。
 発表は、どれかの会員であればできる。連名に会員が含まれれば会員外でも発表できる。
 情報処理学会、電子情報通信学会が扱う分野には、基礎理論として論理学があるので、弁証法論理学は議論すべきテーマになり得る。今回は矛盾という弁証法論理学の単位がテーマである。
 情報処理学会、電子情報通信学会の基礎理論に関する分科会は、科学、技術、哲学、心理学、言語学などに関する境界領域のものも多くあり、技術の学会なのか哲学や言語学の学会なのか分からないような発表がある。

 本文にしていただいた、高原利生「不確定な矛盾の生成」雑文 - 2014年12月11日
http://maganetoru.blog.fc2.com/blog-entry-539.html
に関して、三つ文章がある。
1.正式の二ページの発表論文(石崎氏に郵送)
2.発表に際して発表者がOHPを使って説明する投射資料(石崎氏に郵送)
3.本文章は1,2が図を含むために、言葉で発表内容を説明するために作ったもので、高原利生の意図、問題意識を言葉で伝えるものになっている。こういう形で公開していただいたことを石崎徹さんに感謝したい。
 なお、1だけが正式論文である。

 石崎氏の批判については、批判文「不確定な矛盾の生成」への疑問 雑文 - 2014年12月11日  http://maganetoru.blog.fc2.com/blog-entry-538.htmlにコメントを投稿させていただく。

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