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トマ・ピケティ「21世紀の資本論」

 14日付の朝日だが、パリ経済学校教授トマ・ピケティの「21世紀の資本論」が、この春英訳されるやアメリカでベストセラーになったという記事と、著者へのインタビューを載せている。
 記事によるその内容は、600ページの大著にもかかわらず、数式を抑え、文学を引用するなどしてわかりやすく書かれ、米欧での300年にわたる租税資料を分析して、資本の集中と経済的不平等は常に進んでおり、その例外は、1914~70年代だけであるとして、それは二つの大戦と世界恐慌がもたらした偶然にすぎない、このままでは世界は19世紀に戻ってしまうと警告している。
 その上で彼が提起しているのは、高額所得者、資産家に対する課税強化と、所得の再分配である。だが、これは一国ではできない。金持ちが税の安い国に資産を移すからだ。国際的に協調して進めねばならない。それは簡単ではないが、進め方を工夫して一歩ずつ前進する方法はあるだろうということだ。
 言っている内容に新しさがあるわけではない。われわれと共産党が昔から言ってきたことにすぎない。
 だが、ひとつには資本主義の学者がそういうことを言う状況になってきているということであり、ひとつにはその本が資本主義の本家で爆発的に売れているということであり、そしておそらくそこには人々を納得させるに足るだけの資料分析があるのだろうということである。
 高度成長期、富の平準化が進み、すべての問題が解決されるかのような幻想が生まれた。しかしそれは戦争のために生まれた一時的な平等化であった、とピケティは言う。本を読んでいないのでここで少し私見を言うと、戦争には資産家の富をも戦費として取り上げる効果はあるだろうし、それが兵士や兵器産業労働者の給料にまわることで、一定の経済効果はあるのだと思う。つまりそういう形での所得再分配が、国家の強制力によって行われ得るということだ。そしてこの戦争を第二次大戦後の米ソ冷戦まで含めて考えるなら、あの冷戦にもそういう積極的意味はあったというのは、ぼくが綱領批判などのなかですでに述べてきたことだ。ただすべてを戦争だけに原因づけているのかどうか、それは本を読まねばわからないが、そういう状況の下で活発化した労働運動、市民運動などの社会主義的あるいは民主主義的な運動の成果を無視しているとすれば片手落ちだろう。
 そしてもちろん、今後のあり得べき改革について、誰がその担い手となり得るのか、どこに改革の主体を見出すことができるのか、という点は欠かせない。
 しかし、どうだろう。社会がここまでの段階まで進んできて、いまさら労働者階級がどうのなどという凝り固まった見方で本当に何かができるのか。むしろあり得べき改革は選挙をとおしてしかあり得ないだろうし、広範な人々が直面し、また直面しようとしている現実に対して、いかに説得力のある改革案を提示できるか。どれだけ人々を納得させるに足る現状分析を示せるか、ということにかかってくるのではないか。遠い将来の夢物語に人々が簡単に乗る時代は終わったのだ。いま世界がどの方向に行こうとしており、それを阻止するためにいま一歩でも前に進める方策は何なのか、そういったことを資本主義全史を緻密に学問的に分析する中で、人々に示していかねばならない。
 そういう実践的な研究と、世論喚起の主体をどこに求めるかという課題は、いままでの組織論とは異なったもっと緩やかで幅の広いものとしてしか考えられないのではないか。
 ただもうひとつ疑問点があるにはある。
 ピケティが挙げているのはあくまで先進国の内部における格差の問題だ。これは誰の目にも明らかだ。金持ちはもはや何の必要もない富をますます膨大に積み上げ、高度成長のなかで生まれてきた中間層は、急速に貧困層へと転落していきつつある。社会的な支えは、教育も年金も生活保護も、その他、あらゆる行政措置も崩壊をきたしている。それはまさに資本論の時代へと逆流していきつつある。
 しかし、第三世界へ目をやったとき、この分析は本当に正しいのか。かつて貧困のなかに捨て置かれていた国々のなかから、新興国が生まれ、そこにも富裕層と中間層の膨大な人口が生まれてきた。この人口を視野に入れれば、それが巨大であるだけに、世界はむしろ全地球規模での新たな平等化を進めているようにも見える。
 もしピケティの分析がそこまで及んでいないとすれば、それは重大な見落としであろう。
 だが、いずれにせよ、格差の是正のために何かせねばならないという結論には疑う余地はない。
 そして、いま起こりつつある現象のひとつとして、朝日の記事をとおしてだけの見聞にはすぎないが、この著作によって引き起こされた事態にも、ひとつの希望を見たいと思う。
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