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小林昭「人間を描く、ということ」(まがね例会用レジュメ)

1、問題提起「小説は人間を描くものだ。なぜだろうか」

 (小説の起源――18~19世紀のヨーロッパ) (註参照)
     ‖
 キリスト教道徳の崩壊
     ↓
 自由の獲得
     ↓
 「人はいかに生きるべきなのか」
     ↓
 小説の誕生
     ↓
 明治の日本も事情は同じである。

(註)小林昭はそれ以前の「物語」と、それ以後の「小説」とを区別
  している。テーマに沿って小説論を展開するための便宜であろう。
  厳密な線引きは無理だと考える。

2、明治文学

坪内逍遥「小説神髄」
「小説の主脳は人情なり、世態風俗これに次ぐ」
「なべて文学の主旨目的は人生の批判(クリチシズム)をなさむが為なり」(マシュー・アーノルドからの引用)
 「当世書生気質」――風俗を描くだけに終わった

 二葉亭四迷「浮雲」 森鴎外「舞姫」 島崎藤村「破戒」
  ――「自我」を描いた
 石川啄木「時代閉塞の現状」
 「私の文学に求むるところは批評である」

 夏目漱石「こころ」「私の個人主義」
  ――自己批評(主人公の自我、同時に作者自身の自我を批評する)

3、芸術のなかでの小説の場所

広津和郎「散文芸術の位置」
「人生の直ぐ隣にいるもの」――里見弴の鳳凰堂論との対比
「近代の小説は、自己の生活とその周囲とに関心を持たずに生きられないところから生まれたもの」
 トルストイ、ストリンドベルヒ、ドストエフスキー
(なぜ人生の隣か――答の一つとして――小説は言葉を用いる)

阿部昭「短編小説礼讃」
「小説は人生そのもの」

(その人間が生きた時代をあわせて描く)
スタンダール「赤と黒」 フロベール「ボヴァリー夫人」 トルストイ「戦争と平和」

4、風俗小説

宮本百合子「私小説、心境小説の限界は、はっきりしている。けれども……(風俗小説は)ショーウィンド(にすぎない)」

5、人間を描くとは?

「人間を描くことは、人がどう生きるのかを描くこと」
「生きるとは人が未来を刻々に選びとること」
「人の実存とその生はあくまで自由」
「生きてしまった事実はもう終わった事柄」
「石のように固まってしまった過去のなかに過去の人間を置き、それの見たままありのまま(を書いたのでは)思い出話だ」
「現在ただいまを生きる人間」

6、裁判をどう描くか

 「事柄の羅列(は)報道(もしくは)パンフレット(にすぎない)」

 そうでないものの例として
 右遠俊郎「告別の秋」「残った松笠」
 「作者は、この小説の中で自分が朝日茂を生きている」
 「人が、“にもかかわらず、あえて”、なぜ選んだのかを書いている」

7、参考「石川啄木の没後百年」(12年4月号)

 「時代閉塞の現状」
 (自然主義文学批判)
 大逆事件に対して、「明星」のメンバーは「みずからの確かな批評を持っていた」
 「一方で自然主義作家は(田山花袋を除いて)反応しなかった」

 「(自然主義には)客観性があった。だが、主体性はなかった」
「人が人生の主体とし時代の主体として生きるなら、つねに新しく何者かになろうとし、現在から未来に向かって形のない自分を投げかけていく、いわば、人は無いもので在ろうとする投企としての存在を生きている」
「明日に向かっての賭け」
「私たちの周囲にも(身辺雑記の私小説にすぎない)自然主義があまりにもしぶとく生き延びてはいないだろうか」

8、まとめ

 小林昭の書いたものは、この二つしか読んでいないが、親近感を持つ。
 それは彼の論調にマルクス主義文学観めいたものが見られず、むしろ力説しているところは完全にサルトル哲学そのものだからである。7で引用した「主体」に関する部分の用語用法(斜体部分)は、どのサルトル解説書をひもといても出てくる言葉だ。
 ぼくの思いに非常に近い。

 だが、2点異論がある。
① 「ありのまま」(アナと雪の女王ではないが)ではだめなのだと力説しているが、現在の文学は(「民主文学」内外問わず)はたして「ありのまま」を書けているだろうか、という疑問がぼくにはある。
 ぼくが書きたいと思うのは、人々には現実が書けていないと思うときなのだ。現実の見えていない文学が主体を書けるだろうか。
②小説の多様性
  小林昭の小説観には強く共感するが、一方で小説は多様なもの
 であると考える。小説をそのジャンルで上下付けしようとは思わ 
 ない。
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