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小山田浩子から「ノロ鍋始末記」へ

 小山田浩子の「工場」を読みはじめている。ぼくは頭の回転が遅いので、小説を読むのにさえ時間がかかる。感想は読み終わってから書く。
「穴」でも彼女は非正規労働者を愛情こめて描いたが、「工場」もいまのところ非正規労働者の話である。
 非正規でしか働けない人が多数者になりつつある今日、それを描くことは正当で必要なことである。高く評価したい。
 だが、労働者の問題はもちろんそれだけではない。
「まがね」54号55号に分載した「ノロ鍋始末記」(このブログでも公開している)は、下請労働者の話である。親会社から見れば非正規と変わらないかもしれないが、一応正社員である。百枚の作品中、「派遣」に触れたのは一言二言に過ぎない。中小企業にさえ派遣が入りこんできている現実を無視できなかったからだ。
 派遣問題に関心がいくような書き方ではなかったはずだ。にもかかわらず、「民主文学」の複数の評者が派遣問題を中心に据えてこの小説を評した。
「まがね」はまだ予定の半分くらいしか配布し終えていないが、配布先からはいくらか感想が返ってきている。ぼくの配布先は、そのほとんどが小説を読むのは好きだが、いっさい書かない人たちであり、そして、共産党とは縁もゆかりもない人たちである。
 もちろん知人の評だから、ほめ言葉をそのままには受け取れない。だいぶ割り引かねばならないだろう。
 ただ、誰もこの小説を派遣の話だとは読んでいない。普通に読めばそうは読めないのだと思う。
 作品が読者の関心によりそって読まれるのは仕方のないことである。
 いま派遣が世間の注目を集めているので、「民主文学」の評者の関心がそっちへいってしまったのだろう。
 もちろんぼくの小説が不出来で、わかりにくかったところに原因があるので、これ以上不平を言うつもりはない。
 ぼくがいま言いたいのは以下のようなことである。
 とりあえずそれは、労働問題は派遣問題に限定されるわけではないこと、派遣を書く人も必要なら、それ以外の労働を書く人も必要なのだということ、そしてさらにそれは、次のような問題につながっていく。
 世の中は矛盾に充ちている。それはA対Bという単純な矛盾ではない。A対B対C対D対et cetera という混沌とした複合矛盾である。
 この複雑な社会に解決を見出した人はもう小説なんか書かなくていい。論を書けばよいのだ。
 ぼくはずっと矛盾そのものを書いてきた。主人公はいるが、主人公が正しいわけではない。主人公の視点では書いているが、一人一人のわき役を主人公と対立させることで、矛盾そのものを描き出そうとしてきたつもりである。
 ぼくが小説を書くのは答えがわからないときである。答えがわかってしまえば、小説を書く意味などないのだ。
 ぼくが提供するのは世の中の矛盾だけである。それによって読者の関心が拡がってくれればよいと期待するのだ。
 ぼくが求めているのは、ぼくの提供した問題を読者が考えてくれることであり、ぼくは解答を与えようとしているのではなく、問題を提出しようとしているのだ。
 そしてさらにもうひとつ付け加えれば、主人公と作者とを同一視するような読み方は、一般読者のほうよりも、むしろある種の専門家のほうにあるのではないか。
 一般読者の方が素直に読んでくれているような気がするのだ。
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