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桜木紫乃「ホテル・ローヤル」

 今期の直木賞受賞作。じつは直木賞作品を読むのは初めてである。芥川賞でさえ、読みはじめたのは最近だ。それどころか現代日本の小説はほとんど読んでいない。(古今東西の名作さえ読めていないが……それで批評を書き続けているのだからよい度胸だ)。
 この作品を批評する気はない。読む本ごとに批評していてはきりがない。ただ思いついたことを少し書く。すぐに作品を離れていくだろうが。
 日本語では普通「ロイヤル」と表記するものを「ローヤル」と田舎っぽく表記したところに作者の工夫があるのだろう。田舎の話である。その土着感はよく出ている。七作連作のスタイル。巻頭の一作は、少し上品なポルノとして読める。つまりあまり低劣にならない程度に性的刺激を提供する。一番印象に残ったのは三作目の「えっち屋」だ。何がなし感慨を残した。まあ、全体によくできている。生活感をもたせながらも、ちょっと風変わりなことをテンポよく書いて退屈させない。
 現代小説というのは、いわゆる大衆小説も、それからいわゆる純文学も(こういう分け方自体がたぶんすでに意味を失っていると思うが)、一昔前のものとはずいぶん違ってきた。大衆小説と言えばヒーローもの、純文学と言えば知識人もの、という固定観念はもはや通用しない。どちらも普通の市井人を書く。つまり生活人であり、労働者である。ある意味ではすべてがプロレタリア小説になった。ただ労働現場はあまり描かれない。やはりアフターファイブの話になる。その点が少し物足りない。
 その中では「ホテル・ローヤル」はわりと労働を描いている。娯楽性を失わない程度にだ。娯楽小説というのは、ほんとうは難しいのだと思う。読者を退屈させたら終わりである。その点いわゆる文学作品というのは、かえって書きよいともいえる。読者を気にせずに自分の好きなように書けばよいからだ。そこでは作者が自分の書きたいことを思いきり書いているので、読むのに少し忍耐がいる。だが複雑な読後感を残す。そういう部分に直木賞と芥川賞の違いがあるかもしれない。
 この小説だけから言うのもなんだが、男性作家がわりとロマンを求めるのに対して、女性作家はロマンをつぶそうとしたがる傾向があるような気がする。まあ、独断だろうが、東野圭吾などと比べてそう思うのだ。東野の書くものはどれもロマンチックだ。桜木さんは、より日常的だと言えるだろう。
 ここから東野論に走っても、あるいは春樹論に飛んでいっても中途半端なので、この項はこれで終わりだ。
 一言だけ付け加える。登場人物がわかりやすい小説と、わかりにくい小説がある。わかりやすいのが直木賞向きで、わかりにくいのが芥川賞向きだろう。
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