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大浦ふみ子「かたりべ」(「民主文学」21年3月号)

 朝鮮人被爆者を中心人物にして、たまたま親しくなった青年英語教師が、資料を読み解いて彼の背景に迫っていく物語。
 実際には作者自身が、相当な資料を渉猟して得た知識と、当事者たちとのかかわりのなかで得たものとが材料になっているのだろう。資料部分にも読み応えがあり、一方では、当事者の一筋縄ではいかない複雑な心理的問題と、それと相対する日本人青年との相克に、解決の難しい複雑な現実をも突きつけられる。これは我々のどうしても知っておかねばならない問題なのだ。
 ひとつ疑問。年齢がしっくりこない。柳永守は14歳で日本に連れてこられて、軍艦島の炭鉱で働かされた後、三ヶ月で三菱造船に移され、そこで原爆を落とされる。1945年、16歳である。もし2020年が小説の現代時間だとしたら、75年経っており、91歳になっている。ところが息子がおり、英語教師英司と同い年だという。英司は25歳であることを柳に言っている。66歳でも子供を作れないわけではないが、これは何年か前の話と考えたほうがよさそうだ。英司の祖父は、80を超えたのを機会に老人ホームに入ったが、すぐにそこを飛び出して自宅に戻ったという人物で、いま何歳とは書いていない。少年のころから三菱造船で働き、原爆のときは出征していて出合わなかったというのだから、1945年には20歳をいくつか超えていたのだろう。つまり柳より数歳年上である。2020年には95歳くらいにはなっている。おそらく10年くらい時計を巻き戻せば、祖父85歳、柳80歳となって、柳の25歳の息子は、柳が55歳のときの息子ということになり、それなら何とか納得できそうだ。また85歳の祖父に、25歳の孫がいても不思議ではない。
 話に関係ないだろうというかもしれないが、いくらフィクションでもリアリティは必要で、それが欠けては話全体が怪しくなってしまう。つまり、同じ年頃の柳と祖父との間で、一方には25歳の息子がおり、もう一方には25歳の孫がいるというのが、読んでいて引っかかるところで、一言説明があってもよかったのではないかと思ったのだ。
 この小説の時間が、2010年か、2020年かということも、小説にとってどうでもいいことではないだろう。日韓関係にも、その国民感情にも、時間的経過がある。
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