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「ロリータ」

 ロリータコンプレックスはロリコンと略されて日本語として定着してしまったが、原作を読んだ人はその割に多くないのではなかろうか。
 かなり読みにくい本である。
 もっとも、そう感じたのは、この本を読んだのが、昼間の労働に疲れ果てて寝着く前の睡眠薬代わりとして、半分居眠りしながら、一晩に数ページ、何日もかけてきれぎれにだったので、そのせいもあるかもしれない。
 作者ナボコフはロシア人、1899年生まれ、ヨーロッパを経由してアメリカでロシア文学の教授となる。ロシア語で何篇か書いたが、英語で書いたのはこれが初めてである。
 にもかかわらず、英語の言葉遊びがふんだんに出てきて、翻訳で読む身としてはそこにとっつきにくさがあったかもしれない。
 主人公ハンバートは、ヨーロッパからアメリカに来た。伯父の遺産で一応生活でき、何らかの学問的著述をしている。少年時代に、少女との性戯の最中を大人に見られて、からかわれ妨害され、恥をかかされたことがトラウマとなって、少女にしか欲望を感じない。
 アメリカに来て下宿先の12歳の少女ロリータに恋をする。
 その母親――つまり家主――との偽装結婚ののちロリータとの関係が母親に露見、母親はいきり立って家を飛び出したところで交通事故であえなく命を落とす。
 かくて義理の親子を装った少女と中年男との性関係が続いていく。
 ここらまではわりとすらすらと読んだのだが、二人がアメリカ中を自動車で旅してまわるあたりから、こんぐらかってよく分からなくなってしまった。
 ポルノ小説を想像したら大間違いである。英語をたくみに(たぶん)駆使して、格調の高い文学的表現でページを埋めていく。
 最後は旅の途中でロリータが失跡し、やがて再会したときには貧しい若者と結婚しており、ハンバートは未練を残しながらも、経済的援助を約束して別れる。そしてある男を殺しに行く。この男がロリータの失跡に関係しているらしいのだが、これが誰なのか分からないまま本を閉じてしまった。
 本の体裁は殺人罪で裁判中の男の手記という形になっている。
 ここに描かれるのは、少女の蠱惑的な魅力にのめりこんでしまう中年男という存在であり、またその対象とされる少女の魅力そのものである。この中年男が知性的な人物であるだけに、効果的だと言えるだろう。
 それは背徳の世界だが、しかしそこにも否定しきれない人間性の真実の一端があり、ある種の芸術的美がある。

 ここでロリータを離れる。
 池澤夏樹は、「宮崎駿はあんなに簡単に少女たちを空に飛ばせるべきではなかった」と、いつぞや朝日新聞で書いたが、どういう文脈で言ったのか、もはや記憶にない。その言葉だけが印象に残っている。
 確かに宮崎駿のアニメでは少女たちが印象的で、たいがい空を自由に飛びまわる。
 ぼくは駿作品をナウシカコンプレックスと名付けたくなる。
 ナウシカの登場は衝撃的だった。
 それまでアニメが嫌いで、子供たちが見たがることに冷笑的だったぼくが、ナウシカを垣間見た途端、くぎづけになってしまった。
 ぼくはそこにジャンヌ・ダルクを見たのかもしれない。
 ディズニーアニメでは、ヒロインはずっと大人っぽい。男の性的関心の対象となるにふさわしく描かれる。
 宮崎駿に限らず、日本アニメの少女たちは、まさに少女で、それはまだ性的対象とはなりえない、痛々しいような存在である。
 だが、おそらく日本の観客はこういう存在を好む。日本人には他国の国民以上にロリータコンプレックスが強いように思われる。
 だが、ナウシカはロリータとはまた違って、一種中性的な存在、痛々しさと猛々しさとを兼ね備えた存在だ。
 セックスとは無縁な場所で、こういう少女像に惹かれる日本の男たちの心情、それはナウシカコンプレックスと呼ぶにふさわしいように思える。

 それで? 何が言いたいの? という声が聞こえてきそうだが、これで終わりである。これ以上書くことはない。ロリータコンプレックスと、ナウシカコンプレックスとの存在について、先日から気になったので、ちょっと書いてみた。
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コメント
42:にじコン by 石崎徹 on 2013/07/21 at 12:33:21 (コメント編集)

 さすが現代社会心理に詳しい。そんな言葉は知らなかった。「ロリータ」を読むような男はもう時代遅れかもしれない。

41:ナウシカ by 笹本敦史 on 2013/07/21 at 08:51:50

ナウシカに女を感じるというか、ナウシカ的なものにしか女を感じないという男がいるのも事実で、「にじコン」(二次元コンプレックス)という言葉もありますね。ロリコンと似ているところもありながら、実在の女性に魅力を感じないというところの決定的な違いがあります。

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