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H・G・ウエルズ(1866-1946)

 いままた、ウエルズが輝いて見える。後世のSFのネタのすべてを一人で生みだしたと言われるウエルズだが、まさにそのとおり、しかも駄作がひとつもない。(佳作だけが翻訳されたのかもしれないが)。すべてがわくわくするほど面白い上に、人間性の洞察、文明批評の鋭さ、百年も前の作家とは思えない。
 わけてもいま最も注目すべきは「タイム・マシーン」だ。
 主人公はタイム・マシーンに乗って80万年後の未来へ出発する。出発前の友人との雑談で「未来社会は共産主義が実現しているに違いない」と友人が言う。
 ところが実際の未来社会はそれとは正反対の社会であった。人類は二つの種に分化している。地上にいるのは見た目はいまの人間と変わらない。美しく、やさしく、おだやかな種族である。彼らは働かない。日がな、のんべんだらりと過ごしている。食と衣とがどこから供給されるのかは謎である。彼らの感性はまことに人間的であるが、その知能と運動能力とはもはや衰えてしまっている。働かないからだ。
 ある夜、主人公は、地下から何者かが現れ地上の人間を捕らえて去るのを目撃し、あとを追う。地下には工場があった。働いているのはもうひとつの種族である。彼らは働いて地上の種族に衣食を提供する。かわりに地上の種族を餌として生きている。地上は彼らにとっての牧場だったのだ。
 この種族は働いているので、運動能力ばかりか知能も地上の種族よりは優れている。だが、彼らには主人公が共感できるような人間的感性はすでにない。見た目も人間とは程遠い。地下生活に適応した彼らは、昼間の地上には(目がくらむので)出てこれない。
 地上の種族は資本家階級のなれの果て、地下の種族は労働者階級のなれの果てなのだ。
 この恐ろしい未来図を荒唐無稽と嘲笑えたのは、高度成長期までの、未来に希望を持てた時代の人間までだ。いまやこの未来図が預言となった。格差の世代間連鎖が起こっている。やがて二種類の動物に分化しないとは言いきれない。
 現代文明への最も鋭い警鐘ではなかろうか。
 
 同時に、「50億年後の地球を救うために、いま原発を手放してはならない」などという世迷いごとがいかに阿呆らしいかもわかるであろう。ヒトとチンパンジーが分化したのはたかだか500万年前である。この先500万年後に人間がどういう動物になっているかは誰にもわからない。人間的尺度で測るべき時間尺度というものがあるだろう。考慮すべき未来と、それすら不可能な未来がある。
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