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空猫時也「光射す海域へ」(「民主文学」20年3月号)

 88年生まれ、32歳。
 また一人、個性的な新人が現れた。
 もっとも、語っている内容にそぐわない生硬な単語や言いまわしが多く、こなれた文章ではない。ぎこちない。素人っぽい。
 でも逆に、それが個性だともとれる。
 流暢な日本語を駆使した文章がすぐに忘れ去られ、ごつごつした一見不器用な文章が印象に残ったりする。
 結局、書いている内容に個性を感じさせるものがあるのだ。
 とはいえ、そこにもぎこちなさはあって、いわばモザイクなのだ。語っているパート相互の整合性がとれていない。
 現在から始まる。ロシア語の翻訳を少しずつだが生業としている。
 そこから幼児期に戻る。恐竜と飛行機に強い関心と記憶力を示し、自閉的なこだわりを持っていた。
 小学生のころにはまだ感じなかったが、中学生になって、自分のコミュニケーション能力に悩むようになった。高校に入ると居場所を失った。
 無謀な高所からの飛び降りで両足の踵を粉砕骨折し、8カ月の入院中に卒業となり、精神も病み始めた。
 というところから、再度小学生時代に戻るのである。
 虫好きのボーイッシュな少女凪子と過ごした思い出深い日々、だが、彼女は卒業すると東京の中高一貫校へ行ってしまい、その交友は終わった。
 次が中学校。三年かけてノート6冊に長編漫画を描き上げた。これがクラスで人気を呼び、いつも男女の生徒が集まるようになった。なかでも秀才の竜一が強い関心を寄せ、親しく付き合った。この竜一は農業を目指していたのに、自衛隊へ行ってしまった。
 というところまで読むと、こちらの頭のなかがこんぐらかってしまう。
1、初めの記述では中学時代はすでに自分のコミュニケーション能力の不足に悩んでいる。ところがあとの記述ではクラスの人気者である。これではまったく整合性がとれない。
2、飛び降り、骨折、入院、高校卒業、心の病、という話の進行のなかで小学生時代と中学生時代の二つの話が語られるので、それはそういうなかにあって思い出しているという、そのときの心の動きとして受け取られ、そういう事件のさなかの精神風景と取ってしまう。つまり、18歳そこそこの主人公が思い出しているのだと受け取る。だから、自衛隊に行ったと書いてあると、この秀才は大学にも行かずに自衛隊に入ったのかと思ってしまう。ところがよく読むとどうも違うようなのだ。防衛大学校を卒業してエリートとして自衛隊に行ったのだ(たぶん)。ということは、この思い出話を思い出しているのは、18歳の「わたし」ではない。
 読者は常に作品の現在を作中人物とともに歩いているのである。骨折、入院、卒業、心の病、思い出とくれば、まだ20歳にならない「わたし」が思い出している姿を頭に描く。つまり「わたし」が思い出している現在地(作中人物である「わたし」がいま立っている時間的な場所)は、高校卒業間近というイメージでとらえる。ところがそうではなかったのだ。「わたし」はすでに卒業から数年後にいて、その地点に立って思い出しているのだ。とすれば、その時間的経過を示唆する表現が必要だっただろう。9ページの表現では、時間的経過がよくわからない。
 ちなみに9ページ下段3行目、<その痛みはわたしを萎えさせて、呼吸することすら難儀であることだった>主義述語の関係が成立していない。<その痛みはわたしを萎えさせて、呼吸することすら難儀にさせた
 こういう箇所がほかにもかなり目立つ。

 そこから先はスムーズに運ぶ。
 20代半ばに、やさしく賢明な両親の勧めで、ロシア語講座に通い始め、50代のウクライナ人女性講師の(ロシア女性に対して持つ先入観とは違った)まるで「妖精」のような笑顔に溶かされてロシア語をマスターし、ユーラシア協会の非常勤スタッフとして翻訳にも従事するようになる。
 ひとつひとつの話はとてもいいのだ。ただモザイクなのだ。整合性がとれていない。それが荒削りの魅力かもしれないが、今後の課題ではあるだろう。
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コメント
140:3月号 by 民主文学の読者 on 2020/02/14 at 23:00:32

4つの小説を読んだ感想としては、どれもイマイチな感じだった。1は高卒後から協会採用まで日々、青春に何をやっていたのだろうかという疑問、アンコのないアンパンの気がした。2は少年少女の読み物?それともPTA活動?でもないし・・・。3は国会前の集会に参加する人々だが組織者がどこにも見えなくロックは革命というのには飛躍を感じた。4は結果はサスペンス?マイホームという題にしては非現実的に思えた。4つから一つ選ぶなら「マイホーム」だが終盤はもっと現実的に工夫すべきで不用な気がした。民主文学ってなんだろうか?心の中にグサッと問いかけ攻め込んでくるのを期待しているが・・・

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