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「民主文学」20年2月号


「異邦人論」にかかりきりだったので、やっと読んだ。それぞれに感ずるところがあった。

工藤勢津子「墓地に吹く風」
 なんといっても文章がよい。以前からこの人の文章にはほれぼれする。内容的にはたいしたことは書いていないのだが、文章がよいと、この作家の、人々に対する、また人生に対するまなざしの確かさ、豊かさ、とでもいったものを感じさせられるのである。文章力というのは確かに技術なのだが、単に技術ではない。文章はその人を表している。
 たぶん、ほとんど作っていないのだろう。母方の一族を書いている。父方の一族に対しては恨みだけしかないが、母方の一族には親しみを持つ。とはいえ、あまり濃密な付き合いはしていない。だから、ポイントだけを抜き書きする。ある意味、突き放している。そのつかず離れずの距離感、空気感、しつこく書かないので、気持ちよく読まされる。

鴨川耕作「蝉時雨」
 自分の父親が特攻隊の生き残りだったと、戦後60年も経って叔父の口から聞かされる話。これは内容で読ませる小説だろう。文章は達者とは言えないが、特攻機が不時着するシーンは迫力があった。

大浦ふみ子「石木川の畔り」
 この人は文章というより、小説づくりがうまいのだ。
 佐世保の自衛隊基地を拡大する計画があり、人口の増大に備えての水の確保のため、ダムが計画されている。そのダムができると村が一つ水没する。もう何年も闘っている。小学生のころから座り込みに参加していた主人公はすでに45歳だ。画家の夢が挫折して、東京で働いていたが、体調を崩して帰ってきた。補償金を受け取って村を離れた人は多いが、両親はまだ闘っている。という話を、いろいろな人物を登場させて、退屈させずに展開する。それがうまいので、読まされるのだ。
 ただ主人公が45歳で、少し齢を食いすぎている。そのわりに幼い感じで、ちぐはぐだ。ちょっと風変わりな女子大生が出てくるが、主人公と齢の差がありすぎるので、うまくかみ合わない。
 死んでしまった同級生の話も、ストーリーにうまくハマらない。反対運動の先頭に立っていたらしいが、死んだ事故というのが自動車の欠陥である。ダムと無関係だ。
 少し話がバラバラになってしまった感じがする。

高田三郎「髭の部長さん」
 一般に女性作家に比べて男性作家は書きなれていない感じだが、この人もそうだ。だが、話は面白い。この作品が一番記憶に残るかもしれない。
 工業高校を出て、メーカーの品質管理部長まで勤めて退職し、戸数500の町内会で環境部長を仰せつかった。会社時代は御用組合員で、闘う組合と敵対し、休日には日の丸を掲げる人物である。
 夾竹桃に毒があると初めて知り、子供たちが集まる公園にそれが植わっていることから、環境部長として、伐採してはどうかと提案する。するといろいろな意見が飛び交う。会社時代の会議で活発な意見が出るということはなかったので、そういう事態が興味深い。
 ということで、だんだん部長さんが変化していく話である。
 学校や企業には、民主主義とあいいれないようなことが多いが、町内会というのは意外と民主的である。現代日本人は、かなり民主主義の訓練を受けてきている。利害の絡む上下関係から解放された場所では、民主主義が花開くのだ。
 そこに日本社会の希望を感じさせるような作品。
 小説としてはかなりちゃらんぽらんだが、それもかえって愛嬌といってもよい。ただ、音楽教師が、学校出てから30年というのは、ちょっとこれも齢を食いすぎている、もっと若い夫婦のほうがよい。それに最後に彼にしゃべらせたのは失敗だった。この音楽教師が作者を代弁している。彼のセリフは、読者がストーリーから感じとるべきことであって、それを作者の代理人がしゃべってしまってはぶち壊しだ。こういうところが、小説を書きなれていないから出てくるのである。
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