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田中伸一「敗戦の姿」

田中伸一「敗戦の姿」

「敗戦の姿」
 三好十郎 火野葦平 坂口安吾 太宰治 埴谷雄高 武田泰淳 堀田善衛

「伊勢シングの闇」
 中上健次 三島由紀夫 姜尚中 徐京植 幸徳秋水 堺利彦 大杉栄 大石誠之助 中江兆民 島田三郎 田中正造 内村鑑三 荒畑寒村 田中伸尚 沖野岩三郎 平出修 菅野スガ 石川啄木 徳富蘆花 高木顕明 森近運平 

「クレーン」でこの人の「敗戦の姿」を読み、感銘を受けて編集者への手紙のなかで触れたところ、編集者から著者に連絡がいって、このご本を送ってくださった。
「敗戦の姿」と「伊勢シングの闇」とふたつ入っている。
「敗戦の姿」は「クレーン」誌上では埴谷雄高までで終わっていたが、本は武田泰淳と、堀田善衛が加わっていた。
 それぞれの作家たちがどのように敗戦を迎えたかを書いている。一人一人の作家を充分に読み込んで、批評家たちの意見にも触れながら書いている。 
 図書館に閉じこもって、資料を取り寄せてもらいながら書かれたそうだ。 たいへんな労作である。しかもまったく知識のないぼくのような人間にもわかるように書いてある。
 どの作家に対してもたいへん興味を引かれた。半分以上の作家を一冊も読んでいない。たくさん読んだのは太宰治だけで、堀田善衛が一冊、坂口安吾が二、三冊、埴谷雄高は「死霊」を読みかけて投げてある。いまからぼくの寿命を終えるまでにどれだけ読めるだろうか。

「伊勢シングの闇」は、どうもこの前段の話があるみたいで、全体のつながりがいまいちわからないのだが、基本的には「大逆事件」を取り扱ったということのようだ。
 大石誠之助という伊勢地方の医師の墓に参るために出かけて行ったというところから、その関連の人々をひととおり取り上げているようだ。
「シング」とは「新宮」なのだ。伊勢の地元では「シング」と発音するそうだ。その新宮のつながりから、この本に書かれている限りでは中上健次から話が始まり、三島由紀夫、姜尚中とまわりまわって、やっと幸徳秋水にたどり着く。
 ぼくは「大逆事件」もまったく知らないのだが、その周辺人物たちには少し馴染みがある。堺利彦、大杉栄、伊藤野枝、荒畑寒村、といった人物たちは、木下順二の「冬の時代」の登場人物たちだ。その「冬の時代」もぼくは宮本研の「美しきものの伝説」から知ったのである。
 宮本研の芝居は二つだけ観た。どちらも文学座で、北村和夫が主役だった。「阿Q外伝」と「聖グレゴリウスの殉教」である。「聖グレゴリウス」とは何のことはない怪僧ラスプーチン(だっけ?)のことで、彼を主役にすえてロシア革命を裏側から描くというもの、どちらも強い感銘を受けた。
 その後大阪の街を歩いていてふと入った本屋で、「宮本研革命伝説四部作」という本を見つけた。このなかに上記二作と、「明治の棺」(田中正造事件)と「美しきものの伝説」とがあった。
 その内容は「冬の時代」とほとんど同じである。ただ、よりエンタメにしており、読みやすい。松井須磨子、平塚雷鳥も出てくる。松井須磨子は「冬の時代」には出てこなかったと思う。
 大逆事件で幸徳秋水たちが殺された後の話で、たまたまその前の赤旗事件で獄中にあった堺利彦、荒畑寒村たちは難を逃れる。その社会主義の冬の時代を「売文社」という会社を作って、手紙の代筆などで、左派系の知識人たちに生活費を稼がせているという話だ。石川啄木の「時代閉塞の現状」はこれを読む以前に読んでいたが、この作中でも取り上げられていた。
 と、まあ、言ってみればその程度の知識しかない。
「伊勢シングの闇」も、たぶん前段で大逆事件をもっと正面から扱っているのではという感じで、この本の限りでは、全体像の見えにくいところはあるが、さまざまな人物たちに様々な資料からせまっていく、著者の基本的姿勢は「敗戦の姿」と共通しており、読ませる作品である。
 両作とも一次資料から論じているところが強みであり、でありながら、読みやすく、概説書ともなっており、読書欲を刺激させられる本である。
 刺激させられても、なかなか読めないのだが。
 ご注文は「クレーン」編集部まで。定価500円。
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