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検察審査会

 10数年むかし、クジに当たって検察審査会に呼ばれた。正ではなくて副のほうで、一ヶ月に一度の審査会に正の欠員が出れば、副が順番に正をつとめる。だから副も毎回出席の義務がある。それなのに支給される経費に雲泥の差があるのは納得しがたかった。採決には加わらないが、発言は許される。そして、どういうわけか、副のほうが真面目に出て来て、正は毎回誰かが欠席するので、副も順番に正をつとめる結果となる。
 検察審査会は検察に属しているわけではない。裁判所の管轄だ。だから裁判所の職員が世話役を務める。審査会に提出されている事件の資料を配り、説明する。
 その世話役の口から聞かされたのは、検察は裁判に負けることを極端に嫌がるということだ。だから、負ける可能性のある案件は起訴したがらない。確実に勝てるものだけを起訴しようとする。そこで裁判官も検察が起訴したのだから有罪だろうという心理に陥りやすい。というところまで果たして世話役が言ったかどうか、記憶があいまいだが、ぼくはそういうニュアンスとして受け取った。
 思ったのは、勝てる案件しか起訴しないとしたら、裁判所など必要ないではないか、ということだ。実質的に検察が裁判所になっている。有罪無罪が検察で決まってしまう。
 これはまずいのではないか。
 検察は法の専門家であり、検察が無罪であると判断したものが覆される事例はほとんどない。だが、そこには決定的な違いがある。裁判所は公開であり、公開の場で有罪無罪を審議する。だが、検察は公開ではないということだ。未公開の場で有罪無罪が決定されてしまう。
 そこにどういう問題点があるか。いろいろあると思うが、ぼくが思ったのは、法の不備が衆目にさらされないということだ。
 例を挙げよう。
 審査員の任期が一年だったか、半年だったか、忘れてしまったが、半数ずつ交代する。最初の半期は新米の我々が、先輩の方々と審議する。終わりの半期は我々が先輩になって、新米の方々と審議する。いくつかの案件をとりあげたが、ほとんどが異議なく却下となった。つまり「不起訴相当」である。どれも個人間のもめごとだった。普通なら民事で済むが、暴力が絡んだのに検察が起訴しなかったので、審査会に訴えてきたという件である。どっちもどっちという感じの喧嘩沙汰で、これは民事で解決してくれと思わざるを得なかった。
 最後に交通事故が来た。守秘義務があるので、いつのどこの事件というのは言えないが、事件の概略をいうのは差し支えない。トラックが青信号を待って左折をはじめたら、子供が後ろから自転車で突っ込んできて、後輪で巻きこみ、死亡させたという事件である。
 最初に提起された審査会の日から、継続審査となった次の審査会まで一か月あるので、ぼくは現場を見に行った。信号待ちしていた道路自体が、いちおう往復二車線ではあるが、そんなに広くない。そこから左折した道路はいわゆる生活道路である。横断歩道でないところを子供が渡ったという説明もされていたが、横断歩道を設けるような道路ではない。道路全体が歩道といってもよいような狭い道だ。もちろん歩行者用信号もない。
 このときからぼくは右左折時の歩行者・自転車の有無の確認に神経質になったが、ミラーでも目視でも見えにくい角度というのは実際ある。前輪ではなく後輪でというのがポイントの一つとなって、民事の賠償は免れないとしても、刑事責任を問うのは無理だという判断になったようだ。
 ぼくはいまでは自転車で行動しているが、対面の車の右左折はよく見えても、並行して走る車の左折は気づきにくい。意識して右後方を確認しなければわからない。
 ましてこの案件では子供である。小学生だ。信号が青になれば行ってよいと思って当然だろう。そのために歩行者優先の法があり、右左折車は歩行者の横断を妨害できないことになっている。この場合は自転車だが、自転車でも一緒だろう。だが、運転手から見えない角度だったとしたら、刑事責任を問うことも無理かもしれない。
 だから裁判すれば、検察は負ける可能性が高い。高いので起訴しない。その結果、この案件に含まれるいろんな問題点が世間に周知されることを妨げてしまう。
 あえて裁判所で議論すれば、いろんな問題点が出てくるはずだ。車の右左折と歩行者の進行とが同時に青になるのははたして信号のありかたとして正しいのか。そこに立法や行政の不備があるのではないか。検察は法に従うことだけが仕事だとしても、負けるから裁判しないでは、やはり納得しがたい。検察は裁判所ではないのだ。検察が結論を出してよいのか。
 ということで、ずいぶん悩んだのだが、それがちょうど任期の最後の日で、これを継続審査にしても、自分は関われず、次の人の負担になるだけと考えると、ふんぎりがつかなかった。
 審査会の結論は三通りあり、「不起訴相当」「不起訴不当」「起訴相当」というのだ。「起訴相当」の結論だと検察は起訴せねばならない。「不起訴不当」だと検察は再捜査して結論を出す。「不起訴不当」が二回出たら起訴せねばならない、ということになったのはこの直後である。このときはまだそんな決まりはなかった。
 結局、「不起訴相当」に賛成して、任期を終えた。いまでも後悔している。
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