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「イオーヌイチ」

「イオーヌイチ」を読んだ。これも風変わりな作品。
 今度の主人公は医者だ。「下っ端坊主の息子で、田舎医者」と表現している。この表現はほかの作品にも出て来たが、どの作品だったか思い出せない。チエホフ自身が貧乏人の出身だから、主人公はたいがいそうなのだ。それが才覚で小金を稼ぎ、上流階級に出入りしているという人物が多い。したがって常に冷めた客観的な目を持っている。
 ある田舎の上流家庭に出入りする。そこの主人は冗談好きで、奥方は自作の小説を朗読する。18だかの娘はピアノを弾く。この奥方の書いた小説の筋書きが、「中二階のある家」と同じ筋書きなのが面白い。
 主人公はやがてこの娘に夢中になり、プロポーズする。娘は鼻であしらい、音楽学校に行ってピアニストになる、結婚なんて考えられない、と言う。
 4年経った。主人公は今では小金をためて前よりずっと羽振りがいい。娘は自分にはピアノの才能はなかったと悟り、過去を蒸し返そうとするが、医者のほうが熱が冷めてしまっている。
 さらに数年経った。医者は今では領地も持ち、町に家を2軒持っていて3軒目を物色している。巨大に肥え太り、患者に対して暴君になり、すっかり俗物になり果ててしまった。
 チエホフは絶望の作家と呼ばれていたらしいが、なるほどこの作品など深いペシミズムを感じさせずにおかない。最初のプロポーズのあと、娘に騙されて郊外の墓地で夜更けにずっと娘のくるのを待ち続ける、そういう美しい場面を書きながら、やがて恋する青年を金浸りの俗物にしてしまうのである。人生の残酷さ、時間というものの残酷さを感じさせる。
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