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望月笑子「無機質な腐敗」

 派遣で働きはじめる冒頭部分はけっこう読ませた。文章に若干乱れもあったが、内容の面白さと文章の読みやすさが勝った。ところがだんだん話があれこれととめどなくなっていき、思いつくまま書いている感じになる。
 頼りない恋人の話、不良少女の話とかいろいろあって、どこでつながっていくのかと思っていると、すべてが切れ切れのまま中途半端で終わってしまい、(受け取りようによってはそれこそまさにリアリズムなのだという気もするのだが)、結局はセクハラの話に収れんされていく。
 それが本筋なのだが、この本筋に入ってからが、事実経過の羅列にすぎなくなってしまう。ほんとうに小説的部分はむしろ本筋に入る前の部分にある。
 セクハラは精神的被害の部分が大きいだろう。それを書かねば小説にはならない。裁判の準備書面で後付けで文書告発されるだけでは、被害が人間的被害として伝わらない。
 何があったかということを書くだけでは小説ではない。それを再現するのが小説なのだ。主人公の受けた痛みを読者に感じさせるのが小説である。
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