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在野の一社会主義者の遺稿から(その1)

 以下は、某氏から提供された氏の父君の遺稿である。著者は1920年生まれ、88年68歳で亡くなっている。中小企業経営者として、実践的に社会主義を考えていた人と思われる。
 何本かあるので、順次公開し、最後に年代順に再構成する。
 提供者の思いを尊重して旧カナなどはそのままにした。
 ただ行替え後の行頭に一字空けのないものが多く、これは空けさせてもらった。
 箇条書き部分のインデントはブログではうまくいかないので、用いなかった(一行だけの短いものを除いて)。
 なお、太字加工はすべて石崎による。
(その1)から(その5)まである。1回目は詩から始める。

「工場」

おお「電設」よ
私は限りなくお前を愛する
たとえ他人に不細工と言われようと。
皆んなで夢み、皆んで考へ
皆んで作ったこの工場を。
あの田んぼの真中に図面を引いたっけ
ああでもない……こうでもないと

すまし又かしこんで人並みに
地鎮祭のおはらいもしたっけ
神様を余り好きでない仲間達と一緒に。

どこ迄出来たらうかと胸をはずませて
三日にあけず眺めにきたっけ

あれから四年有半
或人はお前を見限り、お前に敵意を抱き
去っていった
お前も随分悲しい想いをしたらうね
風に吹かれ、雨にうたれても
お前は一言のぐちも言わず
その悲しみにジッとたえて呉れた。

自慢の食堂で
仲間達を集めて
私はいい気になって演説をぶったっけ
だけどあそこには
もっと尊いものがあるんだよ
健康で楽しい食事
誰一人お腹をこわした事のないと言う
賄いのおばさん達の平凡な誇りこそ
限りなく尊いものであるものを……


そしてあそこでよくけんかをする会議
「つきあげろ」と「しあわせ」の歌の合唱
仲間達よ目をとじよ、静かにしたまえ
その歌声が食堂からきこえてくるではないか
楽しやかに

冷たい北風の吹く夜
皆んな暖かい家庭で静かな眠りにつく時も
お前を見守って呉れる
三人の守衛さんの事も忘れないでお呉れ
その友人に心あれば一言
言葉をかけてお呉れ
「私が無傷でおれたのも
三人の友人のお陰です」と

倉庫の品々よ、お前も
出番を待つ間冷たくて淋しいだらうけど
我慢してお呉れ
お前達をむかえ、おくり、数えて暮らす
晴れの舞台を持たない
倉庫番も一緒にいるのだから
冬は寒いだろう、夏は暑いだろう
その仲間達よ、広場に出でよ
腕なを一杯に広げて
思いきり太陽を吸え

誰がなんと言おうと
お前を愛し お前を信じた百三十人の
労働者こそ ここの主人公だ
お前も又この主人公達を信じてお呉れ
「卑怯者去らば去れ 吾等は赤旗守る」
と赤旗の歌を歌ってお前の許に
踏みとどまった労働者諸公の
英雄的な働きにお前も感激したろうね
お前も又一人の労働者も失う事の
ないように心あらば祈ってお呉れ

又労働者諸公のつつましやかな顔……
お前を足場にして平和で豊な
新しい日本を作ろうと言う願いに……
パートナーとしてつきあってお呉れ
そしてみんなの踏台であり
又永遠にかわらざる象徴であってお呉れ

私はお前の大地に口づける
仲間達の手あかでよごれた工場に口づける
お前と共に生くる事が悩みと苦しみ
だけでも構わない
私は残りの人生をあたたかい
お前のかいなの中にゆだねる
かたく抱きしめてお呉れ
絶対手放さないと言ってお呉れ

限りなくいとほしき「電設」よ

    1966・1・22
    R H

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