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憲法9条(第5回) 拉致問題

5、拉致問題

 ここでいったん立ちどまり時計を戻して、拉致被害者が帰ってきた時点から検討してみよう。
 そもそも拉致に関して、日本と北朝鮮の間には認識のずれがあった。朝鮮戦争は実はまだ終わっていない。一時休戦の状態なのだ。北朝鮮と韓国とはお互いスパイ活動拉致活動をやりあっていた。北朝鮮にとっての戦争当時者であるアメリカと軍事同盟関係にあり、韓国とも同盟関係にある日本は、北朝鮮にとっては敵国である。その状況のもとでは、スパイも拉致も正当な活動とみなされてしまう。
 日本人には思いもよらないことである。日本人は誰も我々があの国と戦争しているとは思っていない。だが、事実停戦協定は結ばれていない。休戦協定だけである。そしてアメリカと韓国の同盟国である我国は、明らかに北朝鮮の敵国なのだ。そこにこの問題における両国の認識の差異がある。
 それはそれとして、小泉純一郎はこの状態の解決に動いた。それは本来彼の画期的功績となり得る仕事であった。小泉の指示を受けた田中均の努力が実り、結果的に五名の拉致被害者とその家族が帰ってきた。これはこれで大きな成果であったのに、世論は全く評価しなかった。田中均は誹謗中傷され、世論は一挙に北朝鮮への非難と制裁へと動いた。
 小泉純一郎にとってこれは大きな誤算であっただろう。彼は拉致問題の解決と交換に北への経済援助を約束して帰ってきた。それは戦時賠償をその名を出さずに解決し、戦争状態を終わらせるものになるはずだった。つまり韓国との間でやったと同じ形式で解決しようとした。
 金正日はこの約束を前に拉致問題について謝りさえした。あの独裁者がである。
 だが、日本の世論は拉致問題が解決したとは認めなかった。むしろ五名と家族の帰国を機に一層沸き立った。
 そして郵政民営化や派遣労働の合法化、あるいはイラクへの自衛隊派遣というロクでもないことばかりやった小泉純一郎五年半におよぶ首相在職時の、唯一にして最大の功績となるはずだった仕事が、さっぱりわけのわからないものとなってしまった。
 このときが国交正常化の最後のチャンスだったのだ。拉致問題にせよ、ほかの何にせよ、国交正常化せずしてどうやって解決せよというのか。正常化が出発点であって、正常化してしまえばその先はいくらでも交渉できる。
 ぼくは日本の右翼はこの問題を解決したくないのだと思わざるを得ない。彼らは日本での彼らの右翼的主張を守るために敵を必要としているのだ。敵が消えてしまっては困るのだ。慎太郎は口汚く田中均をののしったが、口先ばかりの慎太郎がただ一人の拉致被害者すら救出できたわけではない。田中均は現実に12名の日本人と1人のアメリカ人とを救い出したのである。
 田中均には、拉致被害者をいったん北に戻すと主張したことで、非難が集中した。もちろんこの主張は正しくなかった。だが交渉当事者の立場としては、そういう約束で連れ帰った以上、当然言わねばならなかったことなのである。一人の役人として忠実に職務をこなしたのだ。彼が非難されるいわれはない。
 あるいはこのときアメリカのなんらかの工作が政界か世論操作に対しなされたかもしれない。アメリカは常に日本の独自の動きを嫌う。日本を支配下に置いておきたいのだ。アメリカの意に背く外交には常に圧力がかかる。
 一方、北のがわは、このとき完全に日本に見切りをつけたというべきだろう。日本と交渉しても得るものは何もない。譲歩するごとに日本の世論は硬化する。何もしない方がましだ。日本は交渉相手とはなりえない。
 金正日の譲歩は日本人の眼には大した譲歩には見えなかった。完璧な成果を得るためには、もっととことん追いつめ、それで言うことを聞かなければ叩き潰してしまえ、という方向に日本の世論は流されていった。
 北朝鮮もこれを境にかたくなになった。そしてぐずぐずしているうちに、日本の経済的地位はガタ落ちになり、かわって中国経済が台頭してきた。
 いま北朝鮮の眼には日本は映っていない。彼らはたしかにアメリカを恐れている。アメリカは世界中いたるところで戦争を引き起こしてきたからだ。核に固執するのは核を持っていればアメリカが攻撃しないだろうと思っているからだ。しかし、アメリカの戦争をよく見れば彼らは彼らなりの利益勘定で戦争してきたのであって、決してイデオロギーで戦争してきたわけではない。北朝鮮で戦争を引き起こすことはアメリカにとって何の利益にもならない。アメリカにその意図はない。北はそれがわかっていない。だから必要以上にアメリカを意識している。
 そして経済は中国に頼ろうとしている。
 こういう経過を見ていくと、北の支配者たちにもそれなりの利益意識が見て取れる。彼らもまた日本を攻撃しても何の得るところもないのだ。
 ただ不安要素は金正日の死後、あの国の体制がまだ固まっていないことである。
 さて日本はどうすればよいのか。我々はチャンスをみすみす見捨てた。問題がこれだけこじれてしまった現在、打つ手を見出すのは難しい。
 そしてそれをさらに困難にしているのは、中国、韓国との間がうまくいっていないからだ。この地域が不安定化しても直接利害関係のないアメリカに、べったりくっついていたのでは前へは進めない。北朝鮮問題は、韓国、中国と日本の三者が結束して対処せねば打開できない。
 いま9条を改定して戦争できる国にして、その先になにがあるのか。いったんその方向へ向かえば歯止めがなくなる。それは亡国の道である。
 信頼され、尊敬される国になる道は、決してその方向にはないだろう。
 我々の前にある道は二つである。この地域で信頼され、尊敬される国になって、しかるべき発言権を確保し、もって東アジアの平和と繁栄をともに築きあげていくか、さまなくば、軍備を増強し、際限ない軍拡競争の道を突き進み、この地域を荒廃させ、ともに破滅していくのか、それを選ぶのはわれわれ自身だ。
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