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小熊英二とIT

 小熊英二が7月末の論壇時評で、誰かの言葉を引用して、「ITは新しい価値も需要も生まない」と書いていた。さらに違う人の言葉から、「ITは一方に失業を、もう一方に長時間労働を生むだけだろう」とも書いている。(すなわち一方に餓死を、もう一方に過労死を)。つまりいまの体制のままでITが進むならという話である。
 書かれている結論はまったく正しい。気になったのは「価値」という言葉の使い方だ。小熊英二は「使用価値」というだけの意味で「価値」と言っている。つまりITは現に存在するものの集計、分類、総合であるから、新しいものは生まれない、というところに力点を置いている。出てくる結論は上記の引用部分であるから、それはぼくの結論と一緒なのだが、そこでは「交換価値」は問題になっていない。「新しい使用価値」が生まれないと言っているのである。そこのところはぼくにはよくわからないのだが、結論は同じなのだ。
 ぼくにとってIT問題は以下のような問題である。
 もし経済を論じようとするなら、「使用価値」について百万言を費やしても無駄のように思える。「使用価値」がそれそのもので「経済」を構成することはありえない。「経済」がありうるためには「交換」が、即ち「市場」がなければならない。「使用価値」が「商品価値」に転じるためには、「労働時間」がなければならない。
 ITの導入効果とはまず何よりもコストの削減である。10人が一日8時間、即ち80時間かかって作っていたものが、40時間で作れるようになる。交換価値とは労働時間であるから、このときこの商品の価値は半分に下がったことになる。
 つまり、ITとは価値を下げるものであって上げるものではない。
「ITの産みだす新たな価値や需要」即ち「新たな使用価値」つまり「新たな欲望対象」が新たな経済活動を産み出すか出さないか、小熊英二はその問題に限って論じているのだろうが、それはぼくには一義的な問題であるとは思えない。何を産み出すにせよ、要するにつきつめれば「スピード化」の問題である。最終的には「数字」に還元される。IT問題の基本がそこから動くとは思えない。
 さてITの導入結果、8時間働いていた労働者は4時間働いて同じ商品を手に入れることができるのか? そうではなく5人が解雇され、残りの5人が相変わらず8時間働くだけの話である。即ち一方に餓死を、もう一方に過労死を。
 必要なのは、ITではなく、社会構造の変換なのだ。
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