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「楽園」追加

 小説は嘘である。小説とは嘘を書くものだ。だが、嘘を書いてはならないものもあるだろう。嘘を書くことになじまないもの、事実が重すぎるもののことだ。
 第二次大戦の敗戦以前の日本帝国主義の諸外国でのふるまいもそういうことのひとつだろう。そういう重すぎる事実について嘘を書くことはできない。だが事実を書くとしたら、それは小説ではない、ドキュメントである。もちろんドキュメントの文学的価値も大きい。
 だが、それでも小説にしたいと思ったら、どう書くべきなのか。夜釣十六の「楽園」は、そういう試みのひとつだろう。
 作者自身の言葉によると、作者はかなり丹念な聴き取りをし、ネットではなく、自分自身の足で取材した。それでもそれは伝聞であって自分の体験ではない。それに実際の体験者はすでに百歳に近い。作者が訪ね歩いたのは直接の経験者だけではなく、この小説の場合のような間接的な伝承者もいたのではなかったか。
 だから作者はそれをそれとして書いたのである。彼女は知ったかぶりをすることを避けて、自分が体験していないことをあたかも体験したかのように書くことを避けて、むしろ伝承という行為に重きを置いて書いた。
 いま日本帝国主義の過去を美化しようとする動きが急である。この作品の元憲兵も、東南アジアをヨーロッパの植民地から救うのだと信じて行動する。そして激しい拒否に遭う。そういうことを伝聞の伝聞として書いた。それは作者の切り開いた独自の小説的方法であったのかもしれない。
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