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2016年10月のエントリー一覧

  • 休載

     N氏の千枚の長編「あるかなきか」は8月の下旬には届いていたのだが、すぐには掛かれなかった。「まがね」の合評をやっていたし、個人的に本を送ったところからの感想が届いて、その関係でやりたいことがいろいろ出た。「浜野博論」をタイプしたり……どこまで必要なことだったか疑問ではあるが、まあ、やってみたかったのだ。 本格的に「あるかなきか」にかかったのは10月になってからだ。原稿に赤線を入れながら読み進めるのが...

  • 日本語文法について

     用が片付いたので、例の21枚を読み直していたら不備が目について書き直した。終わってみると24枚になっている。400字詰めなら60枚近い。以前に書き送ったのが400字詰め相当で25枚くらいだったから、この作品だけのために85枚書いたことになる。まだ不満はあるが、このへんでやめる。 しかし、今回の仕事は無駄ではなかった。文学についていろいろ考えさせられたこともある。文学についても、人間についても、思想や政治や組合運...

  • 日々是好日

     月初めに、千枚作品を3分の1ほど読んだ段階で、そこまでの指摘事項をA4で11枚にまとめて送った。今回一通り赤を入れ終わって、昨日今日と、指摘を含め、感想を書き終えた。A4で21枚、33字×30行だから計算してみると、400字詰め50枚ほどになる。ちょっと時間を食ったなと思ったが、この長さなら仕方がない。相手が千枚だからこのくらいは必要だ。 明日明後日とちょっと用があるので月曜日に読み直して、火曜日までには赤を入...

  • 「失われた夜のために」

    「失われた夜のために」の改版をアップしたときに、旧版を消したのですが、あっと気付いたら、高原さんの書いてくださった懇切なコメントも一緒に消えてしまっていました。読み直したいと思っていたのにできないことになって残念です。せっかく書いてくださった高原さんに対しても申し訳ない結果となりました。どうかお許しください。 なおタイトルは、「失われた夜を求めて」ではありません。プルーストの「失われた時を求めて」...

  • ホロコースト記念館(福山)

     鞆以外にほとんど観光名所のない福山(ばら祭りはあるが)の隠れた名所、知られざる名所(と思っていたのはぼくだけで、岡山で話したらみんな知っていた)、ホロコースト記念館、アンネの家である。 福山に来た時から何となく気になっていた。土曜日に初めて行った(ちなみに日、月、祝日休館、土曜日はやっている。入館無料)。無料だからと馬鹿にしてはならない。行ってみただけの値打ちは充分にあった。 気になっていたのは...

  • 池戸豊次「鹿を殺す」(「民主文学」16年9月号)

     不思議な小説である。じつは三度読んだ。一回目は下手な小説だなと思って飛ばし読みした。途中少し引っかかった。「工作が苦手だった俺がいま職人の仕事をしているのが、おかしいです」と若い水道屋である主人公が語ると、主人公の小学校時代の恩師でもあるお寺の奥さんが、「苦手だからいいの、なんでもすぐ出来てしまう子は飽きてしまって、時間をかけて出来た子のほうがそのうちうまくなっていくのが不思議だった」と答える。...

  • 石井 斉「海が見えたら」(「民主文学」16年9月号)

     ジッドの「狭き門」についてジャック・リヴィエールなる評論家が次のように言っている。 <これについては語りたくないほどな書物、読んだことさえ人に話したくないほどな書物、あまりに純粋であり、なめらかなるがゆえに、どう語っていいかわからないほどな作品、これこそまさに一息に読まれることを必要とする作品。愛をもって、涙をもって、ちょうどアリサがある美しい日に、ぐったりと椅子に腰をおろして読むように> 石井...

  • 矢嶋直武作品二本

    ①「犬と鈴と老人」(「民主文学」15年4月号)②「金色の丸い月」(同16年2月号) どちらも素晴らしい作品である。①は日本語の研究を目指して日本に留学したのに、精神を病んで帰国のやむなきにいたる貧しい中国人女子学生の話。②はその序章ともいうべき物語で、日本留学を決意するまでの女子学生の心境が語られる。 ①は去年読んでブログに感想を書いた。書いたけれども作品の内容も感想の内容も、感想を書いたということさえ忘れ...

  • 失われた夜のために (序)

     失われた夜のために       序 二〇〇九年の秋に、定年を三年延長して年金生活に入ると、永年働いた土地を離れて、両親の遺してくれた住まいに引越した。永年働いたとはいえ決して馴染んだとは言い難い土地だったので、そこを離れることに未練はなかった。引越した町も生地ではなく、その家に住んだこともなかったが、ともあれ小学校の途中から高校卒業までを、数回転居しながら過した町で、半世紀の不在が町の姿を激変さ...

  • 失われた夜のために (その1)

     失われた夜のために      一 僕は手をとめる。なぜうまくいかないのか、よくわからない。うまくいかないというよりも、どうやら限界なのではないか。登場人物が百名を超えてから、もうこなしきれなくなっている。民部少輔とか図書頭とか左衛門佐とか筑前守とか、そういう馬鹿々々しい幾十もの小官職が、僕の頭に悪腫のように堆積している。そいつらはこびりつき、しこりのようになり、僕は眼をつむる、すると、後頭部から...

  • 失われた夜のために (その2)

          二 鉄製のむきだしの階段を上がって、薄暗い廊下を通り、手探りで錠前に鍵をさしこむ。中はほとんど真暗で、外と同じように冷え冷えしている。畳の上にあるものを蹴飛ばしてしまわないように用心しながら、そろそろと、部屋の中央へ進み、足が炬燵布団の端を踏むと、見当をつけて、その上のあたりへ、右手を左右させる。手が紐をつかみ、引張り、灯りがつく。炬燵のコンセントを入れ、同時にポットのコンセントも入れ...

  • 失われた夜のために (その3)

          三 それからまた、僕は一生懸命働いた。僕が一生懸命働くということは、今では、誰でも認めただろう。もちろん、以前はそうじゃなかった。以前は仕事の間じゅう上の空で、しばしば僕はむしろ目覚めてなかったし、定時のサイレンが鳴るとはじめて、僕は僕がここにいるのを見いだすのだった。そして、それから、言葉や笑いや表情や身ぶりをとりもどして、街から街へと駈けずりまわる、僕の夜が始まるのだった。そのころ...

  • 失われた夜のために (その4)

          四 その次の日曜日に、岡が訪ねて来た。彼は朝あまりに早く来たので、僕は昨夜からまだ眠っていなかった。雨戸を閉め切った部屋の中で、僕は六時ごろドアの下から差し込まれた朝刊を炬燵の上いっぱいに拡げ、まだ読んでいた。けれども、そろそろ眠ろうと思い始めていた。岡はノックし、僕が立っていってあけてやると、「起きてたの? 朝早く迷惑じゃない?」「いや、大歓迎だ。入れよ」 僕は手早く畳の上を片付け、...

  • 失われた夜のために (参考系譜)

    ...

  • 失われた夜のために (その5)

          五 すべて、うまくいっている。僕は毎日働き、働いて食いぶちを、つまり自由を稼いで、それを残らず系図書きに注ぎこんでいる。 帝国紀元八十年のこの時点においての眼目は、第九代皇帝康武の権力をいかに守り抜いていくかだ。彼は敗れてはならない。それは美学上の問題だ。父、昌泰帝から八年前に受け継いだばかりの彼の地位が、早くも彼の従兄弟たちに移っていくようでは、昌泰帝の二十年間の治世があまりにうつろ...

  • 失われた夜のために (その6)

          六 そしてまた、別の日曜日の午後。 いつのまにか、うとうとしていたらしい。ドアが控えめに叩かれている。炬燵に座ったまま、僕は返事した。ノックは止まったが、誰も入ってくる気配がない。どうぞ、と僕はいった。遠慮がちに開かれたドアから若い女が顔をのぞかせた。「お勉強中ですか」明るい声で女がいった。「いいえ。お休み中です」「少しお話していいですか」と女は同じ調子で続ける。 どんな用事かときくと...

  • 失われた夜のために (その7)

          七 桜が咲き始めた。今朝、路面電車から通りすがりに、寺の土塀の上に顔を出した花びらを見た。人々は浮足立ち、花見の準備を始めているだろう。僕は通りすがりに見るだけだ。それもまたいいかもしれない。わざわざ用意して見に行く、目的化された花は、どこか生活から切れている。生活の中で通りすがりに見る花は、かえって生活の中の一風景として心に残るかもしれない。負け惜しみか? 一瞬で通り過ぎ、いまや見飽...

  • 失われた夜のために (その8)

          八 僕はとり残され、寸時、ぼんやりした。だが、何を考えてみようとする間もなかった。誰かがテーブルの向う側に立ったからだ。僕は眼を上げた。「やはり、あんただったな」 小平だった。男としてはくっきりしすぎる顔が、二年前と同じようにそこに立っていた。僕は苦笑した。「ここに来るんじゃなかったな」「おれと会いたくなかったてか」 僕は心から笑った。「いや。会えて嬉しいよ」「そうでもなさそうな顔だっ...

  • 失われた夜のために (その9)

          九 結局一週間後に、僕は電話した。その次の日曜日に、花見客でにぎわう河原にかかった橋の上で、僕らは会った。おもちゃのような郊外電車を降りて、人ごみの中を橋の方へ歩いていくと、圭子は欄干に寄り添って、人々の頭のあいだで、僕を見ていた。橋が地面より少し高くなっているので、彼女の顔はよく見えた。少しも変っていなかった。僕が近付くまで、彼女は表情を変えずに、ずっと僕を見ていた。人々に押し流され...

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