・声  石崎明子 ・小岩井にて  石崎明子 ・音楽  石崎明子 ・白樺  石崎明子 ・アンジェーーAngersーー 石崎明子

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カテゴリ:石崎明子のエントリー一覧

  • 声  石崎明子

     秋の長雨が続く曇天の日だった。ぶあつい雲の層を朱色に染める雨上がりの夕暮れ時、通勤鞄と買い物袋をかかえて郵便受けをのぞくと、1通の手紙が来ていた。アルファベットで書かれている差出人の名前に、一瞬のうちに記憶がよみがえり、私は時を戻っていた。4年前のあの南仏の小さな街まで。 声を探しているんだ、と彼は云った。 私達はカフェにいた。マイケルは私の前にすわっていた。それはおだやかな秋の日で、ふりあおい...

  • 小岩井にて  石崎明子

     きのう頂を雲にかくし 神の不可知を語った岩手山が 今朝秋空に凛と立ち 彫りの深い顔立ちでじっとわたしを見つめる 神は死んだとニーチェは云ったが それならこうして畏敬の念に打たれ 知らず知らず合掌し祈る私は何だろう 自然の侵すことのできない美しさは ときに神ととても近い 岩手の人は朝な夕な 岩手山に祈るのだというーー 踏みしめた足が冷たい 霜のおりた草々が 靴をすっかりぬらしてしまった 冷たい空気...

  • 音楽  石崎明子

     約束のない土曜日の夜ほど退屈な時間はない。一人で夕食を終え、食器を洗っていると、マダムがやってきて、今夜、英国人の散歩道で花火が上がるのよと言った。メルシ、行ってみますと返すと、うれしそうに微笑んだ。 元オーストリア人の彼女の息が抜けるようなアクセントにも、最近はずいぶん慣れた。はじめて電話をした時は、何を言っているのかほとんど分からず、これが話に聞く南仏のアクセントかと大きな勘違いをして、不安...

  • 白樺  石崎明子

     図書室で勉強しようと思ったのには訳がある。韓国人のスーキョンが、ガラス越しにリスを見たと言ったのだ。 図書室は寮の中庭に面している。奥の方は密林のような有り様だから、リスがいたって不思議ではない。フランス美術史のノートをめくりながら、時折ちらっと庭を見やる。 もう中心街ではノエルのイルミネーションがにぎやかで、オペラ座の前の広場には回転木馬も姿を見せた。ウィンドウの樅の木は店ごとに趣向を凝らして...

  • アンジェーーAngersーー 石崎明子

     土曜日はいつも雨 アンジェの雨は音もなくふる きこえるのは ただ 木の葉のざわめきだけ こまかな雨が 立ち並ぶ家々を 石畳の路地を 木々を しっとりとしめらせていく ぬくもったへやの中で 横文字の小説にかじりついている私 ときおり外を眺めては あした天気になあれとためいきをつく おりしもへやを満たすはショパン 雨のプレリュード そうだな でも雨はきらいじゃない こころが静かになるから 日曜日はい...

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