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カテゴリ:2000字小説のエントリー一覧

  • 「じゃ、来月は石だからね」里見が涼しい顔で言った。 里見というのは三年生で、女で、部長で、まあ、美人のうちかな。だからひっかかったんだ。おれは小説クラブなんか入るつもりはなかった。でも小説は嫌いじゃないから、ま、いいかな、と思っていたら、小説を読むところじゃなくて、書くところだったんだ。 題を与えるから2000字で書いて来いという。それもアイウエオ順にやるというんだから、めちゃだ。入学早々、「雨」をひ...

  •     For Whom the Bell Tolls 神学館の二階のチャペルにはキャンパスのざわめきも聴こえてこなかった。休日のせいではない。いつもそうなのだ。 ステンドグラスから洩れくる明かりはやわらかく、冷んやりした室内にいると、戸外の初夏の陽気が嘘のように思われた。 こぢんまりしたチャペルには誰もいなかった。裕子は最後列に腰を下ろして、手元のせまい台に英語版のヘミングウエイを置いた。 誰もいない。裕子は携帯...

  • 「一切がはっきりしたのだ」 後ろ手に喫茶店のドアを閉めながら、智子はつぶやいてみる。 なるほど、いつのまにか雨が降り出していて、傘がないから軒下から出られないということが、はっきりした。うかつだった。奥のテーブルにいたので、気づかなかったのだ。でも、軒下沿いに歩いていって、地下通路に逃げ込めばいい。電車に乗ってしまえば何とかなる。それにしても、もうちょっと様子を見よう。少し強すぎる。午さがり、空は...

  • 駅(バージョン2)

    「わかってるさ」いらだって、ギングの声がつい高くなった。「宇宙人保護法ができたくらい、ぼくだって知っている。でも法律は人の行為は罰するが、感情までは罰しないんだぜ」「ママ、それ本当よ」とルルが言った。「オーレ先生が言ってたわ。でもわたし、あの人たちわりと好きなの。かわいいじゃない」「ルル、おまえいまなんて言った? あの人たちって、あの化け物たちのことかい? あのとんでもなく気味の悪い、嫌なにおいの...

  •  時間がない。あの銀行の角をまがって階段を下りれば、郊外私鉄の地下駅だ。そこから二人は反対方向の電車に乗る。真美は自宅に、岳史は下宿先のアパートに。そして一週間後に卒業式を終えると、岳史は就職先に旅立つ。それまでに会う時間をとれるかどうかわからない。時間がないのだ。岳史は言い出すきっかけを焦っていた。なのに、真美は自分の話題に執着し続ける。「カコが言ってるのは、最後に一度二人で会いたい、それだけの...

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