・ヨーロッパ(その1) ・ヨーロッパ(その2) ・ヨーロッパ(その3) ・ヨーロッパ(その4) ・すずめ ・ある経営者党員の詩 ・あこがれ ・アトム論考 ・ゆで卵について

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カテゴリ:エッセイのエントリー一覧

  • ヨーロッパ(その1)

     妻と交代して窓際の席に移動したとき、ぼくの目に飛び込んできたのは月世界の光景だった。土色の油絵具をぶっとい絵筆でたっぷりすくって、キャンパスに見立てた地上を端から端までめちゃくちゃに塗りたくってしまった、かのような、それは不毛で、おどろおどろしい世界。それがどこまでも続いていく。いったいどんな異世界に迷い込んでしまったのだろう。 よく考えると、飛行機はシベリア上空を飛んでいるのだった。生まれて初...

  • ヨーロッパ(その2)

     そのあとイタリアへ行っても、スパゲッティもピザも食べなかった。スパゲッティとピザがイタリアの名物だということが頭から飛んでいた。何を食べていたかと言うと、スペイン広場から少し下がったところにある夕方になると開店する小さな店で、毎日あさりの粥を食べていた。砂だらけでじゃりじゃりする粥だった。でも、まあ、おいしかった。 ピザはイタリアではなく、ベルサイユで食べた。一駅乗りこしてしまい、そこから宮殿ま...

  • ヨーロッパ(その3)

     以上はかなり前に書きかけてそれっきりになっていた紀行文である。海外旅行の話を聞かされるくらい退屈なことはないという。いまどき普通の勤め人なら毎年のように海外旅行しており珍しくもなんともない。海外で長期間勤務した人も多く、すでに海外は日常だ。それを自慢たらしく聞かされるのはうんざりだということらしい。でもぼくは海外だろうと国内だろうとよその土地の話を聞くのはわりと好きだ。たぶんぼくがもうじき70にな...

  • ヨーロッパ(その4)

     トレビの泉ではジプシーの母子に財布を狙われた。赤子を抱き、小さな男の子と確か女の子も連れていた。すっぽり布を被っていかにもジプシーらしい格好だ。布の間から赤子を抱いた手を出して恵んでくれという様子。戸惑っているあいだに子供がぼくの胸ポケットに手をつっこんだ。ぼくは振り切って逃げた。ポケットを確かめるとメモ帳をやられていた。 パリに帰って最後の日、広場で煙草を吸っていると、普通の身なりの男が来て煙...

  • すずめ

     せめて二十歳にならないうちなら、たとえば、雀のことだって書けたのだ。 ときたま、父は空気銃を使って職場の雀を撃った。彼は、県立の工業試験場でその地域特産の絣のデザインを画いており、そこには付属の機織り工場があって、女工さんたちがいた。昔風の屋根で軒下に巣を作りやすく、まわりはまだ田園地帯だから、雀も多かった。 持ち帰った雀は、羽根をむしられて醤油をまぶしカラ揚げにされた。その香ばしさが記憶に残っ...

  • ある経営者党員の詩

    (投稿者の許可を得たので公開します。なお「詩」のカテゴリを設けてないので「エッセイ」にいれます)「工場」 おお「電設」よ 私は限りなくお前を愛する たとえ他人に不細工と言われようと。 皆んなで夢み、皆んで考へ 皆んで作ったこの工場を。 あの田んぼの真中に図面を引いたっけ ああでもない……こうでもないと すまし又かしこんで人並みに 地鎮祭のおはらいもしたっけ 神様を余り好きでない仲間達と一緒に。 どこ迄出来たら...

  • あこがれ

     出身地をきかれると、ややこしいので福山と答える。事実、少年時代のほとんどを福山で過ごした。でも最初の記憶は十日町なのだ。そこに何年いたのか、いまではわからない。両親にはきかずにしまったし、姉にきいてもはっきりしない。 少なくとも二冬は過ごしたはずだ。というのは異なる家での冬の記憶があるから。 ひとつめは中心市街地からさほど離れていなかっただろう、ちょっとした川のかたわら。凍りついた川の上で年嵩の...

  • アトム論考

       1  ドラえもん アトムのことを書く。でも話はドラえもんから始まるのだ。 二十五年前、ドラえもんに出会って、衝撃を受けた。それよりもう少し前、ぼくらは、大学生が漫画を読んでいると言われた最初の世代だった。同じ藤子不二夫のオバQが話題になったのを知っていたが、ぼく自身は読んだことがなかった。白土三平しか読まなかったから。 タイトルはドラえもんだが、主人公はのび太という、さえない男の子である。ス...

  • ゆで卵について

     ゆで卵について書こうと思ったのには、これといった理由はない。コロンブスのむこうを張るつもりでもなければ、レイモンド・チャンドラーを語るのでもない。もちろん卵料理の薀蓄を傾けるわけじゃない。ぼくは料理のことはからきし知らないし、いつぞやテレビでゆで卵の剥きかたについて解説が始まったときには、馬鹿らしいと思って席を離れたくらいなのだ。だがじきに馬鹿にしたことを後悔することになった。ゆで卵を剥くのは案...

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