・平井真(1) ・平井真(2) ・平井真(3) ・幽霊 ・つまらない話 ・祈り ・三郎のふしぎな日々

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カテゴリ:短編小説のエントリー一覧

  • 平井真(1)

     平井がベッドの中で一人目を覚ましたとき、しばらくの間、自分がどこにいるのかよくわからなかった。頭のまうしろの窓があけはなされ、白いレースのカーテンが風に揺れて彼の顔をくすぐりながらいったりきたりしていた。窓からは空がよく見えた。すばらしい天気で、その眩しさに平井は一度また眼をとじた。すると、まぶたの裏で七色の光の輪が躍りはじめた。頭が痛く、けだるく、睡かった。 そうしてじっとしていると、闇の中か...

  • 平井真(2)

     中川原に電話せねばならないことを思い出し、紙切れを手にとってダイヤルをまわした。中川原はすぐにでた。平井はまた、おはよう、といった。「どこからなの。もう帰ったのか。結構なご身分だなあ。朝帰りだってんだから」多少語尾を伸ばし気味にしゃべる中川原の声だった。「何をいってやがる。誰かとちがって、おれは一週間まじめに働いたんだからな。土曜日くらいは自分のものだ」「それをいわれるとつらいね」「仕事はどうな...

  • 平井真(3)

     車はビルの間の混雑したよつかどの方へと入っていった。それは昨夜、平井が本多や梨絵子と酒を飲んだあたりだった。そのあとで平井は広美の勤めるバーへいったのだ。それもこの界隈にあった。「ま、何だな」と本多がいった。もう三人ともかなり飲んで、何年間も会わなかった気まずさから解放されかかってきていた。「みな、落着くところへ落着いたようじゃないか。昔はお互いいろいろといいたい放題もいったものだが」「ちょっと...

  • 幽霊

     祖母が死んだ。私が田舎へ帰ったときには、祖母はすでに墓の中だった。その日から、幽霊は毎日出た。昼のあいだじゅう出た。居間の縁近くの、古い井戸に水を汲みにきて、重そうな桶をかかえて、勝手の方へと運んでいった。いくらも経たずに戻ってきたとき、桶は片手にぶらさがっていた。縁のすぐ前で背中を丸めて、幽霊はゆっくりとつるべをたぐった。小さなつるべが上がってくると、こぼさないように慎重な動作で桶に移した。そ...

  • つまらない話

     ときどき、ぼくは思うのだが、ぼくの友人の奈須二郎ほど不精な人間を探し出すためには、よほど世間が広くなくてはかなうまい。 とはいっても、ぼくは、なにも、独身寮の彼の部屋が汚いだとか、彼は靴下というものをはいたことがないだとか、そんなみみっちい話をいちいちとりあげるつもりは毛頭ない。元来、独身寮は汚いものと相場がきまっているし、奈須が靴下をはかないのは、たぶん不精のせいではない。雪のちらつく、凍てつ...

  • 祈り

     蝉がしきりに鳴く。高く枝を拡げた幾本もの樹木の、重なりあった葉の揺れるにつれて、陽の光はきらめきながら降ってきた。 「怖かったな」 父親と並んでベンチに腰かけた女の子がいった。女の子は十くらいで、眼鏡をかけていた。よく肥えておっとりした丸い頬をし、白い帽子と白いスカートを身につけている。彼女がひとつかみ、とうもろこしを放ると、鳩たちが枝々からわっと舞い降りた。 「怖かったかい」 「うん、怖かった...

  • 三郎のふしぎな日々

     三郎は、空想することが好きな少年です。春が来たので、みんなは原っぱで野球をして、ボールを投げたり、大声で叫んだり、走ったり、笑ったりしています。でも、三郎は、ひとりぽつんと、すみっこのブロック塀にもたれて、うずくまっています。 ときたま、ボールが近くまで転がってくると、三郎は立っていって、拾いあげ、放ってやります。そんなおりに、ひろしや、ほかの少年たちが、 「三郎も、いっしょに、やらないか」 と...

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